「バーを開業したいけれど、風営法の許可は必要なの?」「深夜営業するにはどんな届出がいるの?」——そんな疑問を抱える方は少なくありません。
結論として、カウンター越しにお酒を提供する通常のバーであれば風俗営業許可は原則不要です。ただし深夜0時以降の営業には「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」が必要であり、接待行為の有無や照明の明るさによっては風俗営業許可が求められます。
この記事では、バー開業時に知っておくべき風営法の5つの営業区分から、届出・許可の手続き、業態ごとの判断基準、違反時の罰則まで網羅的に解説します。
目次
バーに風営法の許可は必要か
- 通常のバー(ショットバー・オーセンティックバー)は風俗営業許可は不要
- 深夜0時以降に酒類を提供するなら深夜酒類提供飲食店の届出が必要
- 接待行為を行うなら風俗営業許可(1号)が必須
バーの開業を考える方がまず気になるのが「風営法の許可が必要なのかどうか」という点でしょう。風営法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、性風俗店だけでなく、酒類を提供する飲食店にも適用される場合があります。
フードメニューを充実させたダイニングバーの開業でも、接待行為を伴わなければ同じ届出で対応可能です。
風営法とは何かを理解する
風営法は、善良な風俗と清浄な風俗環境を守り、青少年の健全な育成を目的とした法律です。深夜営業や接待行為を伴う飲食店は地域の治安や生活環境への影響が大きいため、営業形態に応じた許可や届出が義務付けられています。
「風俗」と聞くと性的なサービスを想像しがちですが、法律上はバーや居酒屋といった一般的な飲食店も規制の対象です。バーの営業形態によって適用される区分が異なるため、自分の店がどの区分に該当するかを正確に把握することが開業準備の第一歩になります。
風営法は正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といい、飲食店のほかパチンコ店やゲームセンターなども規制の対象に含まれます。
引用元:e-Gov法令検索 風営法
「許可」と「届出」の違い
風営法に関わる手続きには「許可」と「届出」の2種類があり、性質が大きく異なります。許可は公安委員会の審査を経て承認を受けるもので、不許可になる可能性もあるのが特徴です。一方の届出は必要事項を警察署に報告する手続きで、要件を満たしていれば受理されます。
| 項目 | 許可(風俗営業許可など) | 届出(深夜酒類提供など) |
|---|---|---|
| 手続きの性質 | 公安委員会の審査・承認が必要 | 要件を満たせば受理される |
| 処理期間 | 約55日(標準処理期間) | 営業開始10日前までに提出 |
| 手数料 | 24,000円(都道府県による) | 無料 |
| 深夜営業 | 原則0時まで | 24時間営業可能 |
キャバクラやホストクラブなど接待を行う店舗は「許可」、通常のバーで深夜に酒類を提供する場合は「届出」が基本です。この違いを理解しておかないと、本来届出だけで済むのに許可申請をしてしまうケースが起こりかねません。バーの開業に必要な資格や届出の全体像を押さえたい方は、飲食店経営に必要な資格2つと届出7種も参考になります。
バーに関わる5つの営業区分

バーの業態によって該当する営業区分は異なり、必要な許可・届出も変わります。まずは5つの区分の概要を押さえましょう。
1号営業:接待を伴う飲食店
1号営業は、従業員が客席に同席してお酌や談笑などの「接待」を行う飲食店に必要な許可です。キャバクラやスナック、ホストクラブが典型例ですが、バーであっても接待行為を行う場合は1号営業の許可が求められます。
1号営業の許可を取得すると接待行為が可能になる一方で、営業時間は原則として深夜0時までに制限されます。繁華街など条例で指定された地域では午前1時まで延長できる場合もありますが、朝まで営業したいバーにとっては大きな制約となるでしょう。
2号営業:照明が暗い飲食店
2号営業は、店内の照度が10ルクス以下で営業する飲食店に必要な許可です。10ルクスとは映画館の上映前のような薄暗さで、ムーディーな雰囲気を重視するバーでは意図せず該当してしまうことがあります。
2号営業では接待行為はできませんが、1室5平方メートル以上で見通しの良い個室を設けることは可能です。照度の基準を超えないよう、内装工事の前に照度計で実測することをおすすめします。
3号営業:個室が小さい飲食店
3号営業は、外から見通すことが困難で5平方メートル以下の個室を設けた飲食店に必要な許可です。VIPルームや仕切りで区切った半個室のある店舗が該当する可能性があります。
個室が5平方メートルを超えていれば3号営業には該当しません。設計段階で面積を確認し、基準以下の個室を設けない設計にすれば、この許可は不要になります。
特定遊興飲食店営業とは
特定遊興飲食店営業は、深夜0時以降に客に遊興させながら酒類を提供する店舗に必要な許可です。2015年の法改正で新設された区分であり、ナイトクラブ、ライブハウス、DJバーなどが該当します。
「遊興」とは、生演奏やダンス、ステージを設けたカラオケ大会など、店側が積極的に客の楽しみを演出する行為を指します。一方で、客が自発的にカラオケを歌うだけ、あるいはテレビでスポーツ中継を流すだけでは遊興には当たりません。スポーツバーやダーツバーの開業を検討している方はこの線引きに注意しましょう。
深夜酒類提供飲食店営業とは
深夜酒類提供飲食店営業は、深夜0時以降に酒類をメインで提供する飲食店に必要な届出です。通常のバーが深夜営業を行う際に最も関係の深い制度で、許可ではなく届出制のため、要件を満たしていれば受理されます。
なお、ラーメン店や定食屋のように主食を提供する飲食店は、深夜に酒類を出していてもこの届出は不要です。あくまでお酒の提供がメインの業態かどうかが判断のポイントになります。
風営法における接待行為の定義と境界線

接待に該当するかどうかで必要な許可が大きく変わります。バー経営で最も摘発リスクが高いのが、接待行為の境界線を超えてしまうケースです。
接待に該当する行為とは
風営法における「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことと定義されています。具体的には以下のような行為が接待に該当し、行う場合は風俗営業許可が必要です。
- 客の隣に座って談笑する
- 客にお酌をする・一緒にお酒を飲む
- 客とカラオケでデュエットする
- 客と密着してチェキ撮影をする
- 特定の客に対して継続的にゲームの相手をする
近年はガールズバーやコンカフェの摘発が増加しています。カウンター越しの接客であっても、実質的に特定客の専属で会話の相手をしていると判断されれば接待とみなされる可能性があるため注意しましょう。
接待に該当しない行為
一方で、以下のような行為は接待には該当しないとされています。
- カウンター越しに不特定多数の客と会話する
- 料理やドリンクの説明をする
- 注文の受付やお会計を行う
- 店全体の雰囲気を盛り上げるためにマスターが一曲披露する
ポイントは「特定の客専属で」「歓楽的雰囲気を醸し出す」かどうかです。カウンター越しに全体の客と会話する通常のバー営業であれば、原則として接待には該当しません。
接待と深夜営業は両立できない
バー経営者にとって重要なのが、接待行為と深夜営業は両立できないという点です。風俗営業許可(1号)を取得すると接待は可能になりますが、深夜0時以降の営業はできません。逆に深夜酒類提供飲食店の届出をすれば24時間営業は可能ですが、接待行為はできないのです。
「深夜0時までは接待をして、それ以降は通常のバーとして営業する」という二毛作は認められていません。どちらか一方を選択する必要があるため、開業前にお店のコンセプトを明確にしておきましょう。
バーの風営法に必要な許可・届出【業態別】

バーの業態ごとに必要な許可・届出は異なります。以下の比較表で自分の店舗に該当するものを確認しましょう。
| 業態 | 必要な許可・届出 | 深夜営業 | 接待 |
|---|---|---|---|
| ショットバー・オーセンティックバー | 飲食店営業許可+深夜酒類提供飲食店届出 | 可能 | 不可 |
| ガールズバー(接待なし) | 飲食店営業許可+深夜酒類提供飲食店届出 | 可能 | 不可 |
| ガールズバー(接待あり) | 飲食店営業許可+風俗営業許可(1号) | 不可 | 可能 |
| ダーツバー(深夜に遊興あり) | 飲食店営業許可+特定遊興飲食店営業許可 | 可能 | 不可 |
| カラオケバー(深夜にステージ演出あり) | 飲食店営業許可+特定遊興飲食店営業許可 | 可能 | 不可 |
| スポーツバー(中継を流すだけ) | 飲食店営業許可+深夜酒類提供飲食店届出 | 可能 | 不可 |
ショットバー・オーセンティックバー
カウンター越しにお酒を提供し、客と適度な距離感で会話を楽しむスタイルのバーであれば、風俗営業許可は不要です。必要なのは保健所の飲食店営業許可と、深夜0時以降に営業する場合の深夜酒類提供飲食店の届出のみとなります。
ただし、照明を極端に暗くしている場合は2号営業に該当する可能性があるため、内装設計の段階で照度を確認しておきましょう。バー開業に必要な資金全体の見通しを立てたい方は、バー開業資金の目安も合わせてご覧ください。なお、バーテンダーの資格は法律上必須ではありませんが、取得しておくとスキルの証明や信頼性の向上に役立ちます。
ダーツバー・カラオケバー
ダーツバーやカラオケバーは、深夜0時以降に店側が積極的に遊興を提供するかどうかで必要な許可が変わります。例えば、バーにダーツ台やカラオケ機器を設置して客が自由に使う分には深夜酒類提供飲食店の届出で足ります。
しかし、深夜0時以降にダーツ大会を開催したり、ステージを設けてカラオケ大会を運営したりする場合は特定遊興飲食店営業許可が必要です。遊興に該当するかどうかの判断が難しい場合は、管轄の警察署に事前に相談しましょう。
ダーツバーの開業資金・マシン導入・物件選びまで一連の準備を知りたい方はダーツバーの開業ガイド|資金・届出・風営法と成功の7条件もあわせてお読みください。
ガールズバー・コンカフェ
ガールズバーやコンカフェは、近年の摘発事例が多い業態です。カウンター越しの短時間の会話は接待に該当しないとされていますが、特定の客専属で長時間会話する、一緒にお酒を飲む、デュエットするといった行為は明確に接待とみなされます。
接待を行うなら風俗営業許可(1号)を取得し深夜0時までの営業とするか、接待を行わず深夜酒類提供飲食店の届出で24時間営業とするか、どちらかを選択する必要があります。
【風営法】深夜酒類提供飲食店の届出手続き

- 届出は営業開始の10日前までに管轄の警察署に提出
- 届出手数料は無料(行政書士に依頼する場合は別途費用)
- 飲食店営業許可の取得が前提条件
届出に必要な書類一覧
深夜酒類提供飲食店営業開始届出に必要な主な書類は以下のとおりです。警察署によってはローカルルールで追加書類を求められることがあるため、事前に管轄の警察署に確認してから準備を進めましょう。
- 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
- 営業の方法を記載した書面
- 営業所の平面図・求積図・音響照明設備図
- 住民票(本籍地記載のもの)
- 飲食店営業許可証の写し
- 物件の賃貸借契約書の写し(一部の警察署)
- メニュー表の写し(一部の警察署)
法人で届出する場合は、上記に加えて定款の写しと登記事項証明書、全役員の住民票が必要です。届出書の様式は警視庁のホームページからダウンロードできます。
届出書の様式や記載例は警視庁のサイトで公開されています。
引用元:警視庁 深夜における酒類提供飲食店営業(様式一覧)
営業所の構造・設備要件
深夜酒類提供飲食店として営業するためには、営業所が以下の構造要件を満たす必要があります。物件選びの段階でこれらを確認しておくことが重要です。
| 要件 | 基準 |
|---|---|
| 客室の照度 | 20ルクス以上を維持すること |
| 客室の床面積 | 1室9.5平方メートル以上(1室のみの場合は制限なし) |
| 見通しを妨げる設備 | 高さ1メートル以上の仕切り等を設けないこと |
| 施錠設備 | 客室入口に施錠設備を設けないこと |
| 騒音・振動 | 条例で定める基準値以下であること |
| 遊興行為 | 深夜において客に遊興させないこと |
特に注意したいのが用途地域の制限です。住居専用地域や住居地域では深夜酒類提供飲食店の営業が認められないケースがあります。物件を契約する前に、自治体の都市計画図で用途地域を必ず確認しましょう。
届出の流れと費用の目安
深夜酒類提供飲食店の届出は、以下の3ステップで進めます。
- ステップ1:飲食店営業許可の取得——保健所に申請し、施設検査を受けて飲食店営業許可を取得する
- ステップ2:届出書類の作成——届出書、営業方法、各種図面、住民票などを準備する
- ステップ3:管轄警察署への届出——営業開始の10日前までに書類を警察署に提出する
届出自体に手数料はかかりませんが、図面作成を行政書士に依頼する場合は5万〜10万円程度が相場です。図面は不動産会社からもらった見取図をそのまま使うことはできず、専用のフォーマットで作成する必要があるため、初めての方は専門家への依頼を検討しましょう。営業許可証の取得手順を詳しく知りたい方は、営業許可証の取り方5ステップをご覧ください。
風営法に違反した場合の罰則

風営法に違反すると、罰金や懲役に加えて営業停止処分を受ける可能性があります。「知らなかった」では済まされないため、開業前に必ず把握しておきましょう。
無許可・無届営業の罰則
風営法違反の罰則は、違反の種類によって大きく異なります。
| 違反の種類 | 罰則 |
|---|---|
| 風俗営業の無許可営業 | 2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(併科あり) |
| 特定遊興飲食店の無許可営業 | 2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(併科あり) |
| 深夜酒類提供飲食店の無届営業 | 50万円以下の罰金 |
| 風俗営業の時間外営業 | 6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金 |
| 18歳未満の者に接待させた場合 | 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金 |
最も重い罰則は風俗営業の無許可営業で、懲役と罰金が併科される可能性があります。例えば、深夜酒類提供飲食店の届出しかしていないバーで接待行為を行った場合、風俗営業の無許可営業とみなされ、この罰則が適用されるのです。
違反を防ぐ3つのポイント
風営法違反を未然に防ぐために、バー経営者が日常的に心がけるべきポイントは以下の3つです。
- 接待行為の線引きをスタッフに周知する——客の隣に座らない、デュエットしない、特定客の専属にならないなどのルールを明文化して共有する
- 営業時間と許可の整合性を確認する——風俗営業許可で営業している場合は深夜0時を過ぎないよう、ラストオーダーの時間を早めに設定する
- 従業者名簿を適切に管理する——スタッフ全員の氏名・住所・生年月日・業務内容を記載した名簿を営業所に備え付ける。18歳未満の者を雇用しないよう、身分証明書での年齢確認を徹底する
判断に迷う場合は、管轄の警察署や行政書士に相談するのが確実です。バー経営の収益面も含めた全体像を知りたい方は、バー経営の年収と利益率も参考になります。
バーと風営法に関するよくある質問
バー開業前に多く寄せられる疑問について、Q&A形式でまとめました。
Q
バーは風営法何号に該当しますか?
A
バーの業態によって異なります。接待を行うバーは1号営業、照明が10ルクス以下のバーは2号営業、5平方メートル以下の個室があるバーは3号営業に該当します。接待も個室も暗い照明もない通常のバーは風俗営業のいずれの号にも該当せず、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業できます。
Q
バーを開くには許可が必要ですか?
A
はい。最低限、保健所の「飲食店営業許可」が必要です。さらに深夜0時以降にお酒を提供するなら、管轄の警察署へ「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」を提出します。接待行為を行う場合は風俗営業許可(1号)も必要になります。
Q
風営法で禁止されていることは何ですか?
A
バーに関係する主な禁止事項は、無許可・無届での営業、風俗営業の深夜0時以降の営業、18歳未満の者を接待業務に従事させること、客引き行為、そして深夜0時以降の遊興行為(特定遊興飲食店の許可なしの場合)です。
Q
ガールズバーは風営法違反になりますか?
A
カウンター越しに接客するだけであれば風営法違反にはなりません。ただし、客の隣に座って談笑する、一緒にお酒を飲む、デュエットするなどの接待行為を、風俗営業許可なしで行った場合は無許可営業として摘発の対象になります。近年はガールズバーやコンカフェの摘発が増加しているため注意が必要です。
Q
深夜酒類提供飲食店の届出にかかる費用はいくらですか?
A
届出自体に手数料はかかりません。ただし、図面作成や書類準備を行政書士に依頼する場合は5万〜10万円程度が相場です。自分で手続きすることも可能ですが、専門的な図面の作成が必要なため、初めての方は専門家への相談をおすすめします。