「バーテンダーになるには資格が必要?」「種類が多すぎてどれを選べばいいか分からない」──これからバーテンダーを目指す方や、将来バーの開業を考えている方にとって、資格の全体像が見えないのは大きな不安要素です。
結論からお伝えすると、バーテンダーに必須の国家資格は存在せず、民間資格を取得するかどうかは任意です。主要3団体(NBA・HBA・PBO)が合計10種類の民間資格を実施しており、初心者向けから上級者向けまで目的に応じて選べます。
本記事では、バーテンダー資格10種を費用・合格率・難易度で比較し、資格取得の具体的な方法、さらにバー開業時に必要な法的資格と届出、厚生労働省統計に基づく平均年収まで網羅して解説します。自分に合った資格を選ぶうえでの判断材料として活用してください。
目次
バーテンダーに国家資格は存在しない
- バーテンダーになるために必須の国家資格はない
- 資格は民間団体が主催する任意のもの
- 資格取得は就職・信頼獲得・キャリアアップに有利
民間資格のみで必須ではない
バーテンダーの仕事に就くうえで法律で義務づけられた資格はなく、20歳以上であれば誰でも働き始めることが可能です。調理師免許やソムリエのような資格も必須ではありません。
ただし、業界には日本バーテンダー協会(N.B.A.)・日本ホテルバーメンズ協会(HBA)・プロフェッショナル・バーテンダーズ機構(PBO)といった団体が資格認定制度を運営しており 、技術と知識の証明として広く活用されています。民間資格ではあるものの、業界内での認知度は高く、取得者は一定のスキルを持つ人材として評価されやすい傾向にあります。
資格取得で得られる3つのメリット
資格は必須ではありませんが、取得することで得られるメリットは明確です。未経験者ほど、資格がキャリアの入り口を広げる役割を果たします。
- 就職・転職で実力を客観的に証明できる:未経験からホテルバーや高級バーへ応募する際、書類審査で有利に働きます
- コンペティションへの出場資格が得られる:一部の全国大会は有資格者のみが参加可能で、受賞歴はさらなるキャリア形成の武器になります
- 顧客からの信頼獲得につながる:認定証やバッジは、お酒と接客のプロとしての信頼感をお客様に与えます
バーテンダー資格一覧|主要3団体の10種類を解説

バーテンダー資格はNBA・HBA・PBOの3団体を中心に合計10種類が実施されています。
初心者はまずNBAバーテンダー呼称技能認定試験またはHBAカクテルアドバイザーから始めるのが一般的です。
| 団体 | 資格名 | 主な受験資格 | 受験料 |
|---|---|---|---|
| NBA | バーテンダー呼称技能認定 | 20歳以上の飲食従事者 | 会員5,400円/非会員21,600円 |
| NBA | インターナショナルバーテンダー呼称技能認定 | 会員3年以上・実務7年以上・25歳以上 | 5,400円 |
| HBA | カクテルアドバイザー | 20歳以上 | 36,000円(通信講座込み) |
| HBA | ビバレッジアドバイザー | 20歳以上の飲料関係者 | 会員25,000円/非会員35,000円 |
| HBA | バーテンダー | 会員・ビバレッジアドバイザー取得者・実務2年以上 | お問い合わせ |
| HBA | シニアバーテンダー | 実務10年以上・28歳以上 | 25,000円 |
| HBA | マスターバーテンダー | 40歳以上・支部長推薦 | お問い合わせ |
| PBO | プロフェッショナル・バーテンダー認定 | 20歳以上 | お問い合わせ |
| JIA | カクテルバーテンダー | 20歳以上 | 10,000円 |
| JFB | ジュニアバーテンダーライセンス | スクール卒業生 | 10,000円 |
日本バーテンダー協会(NBA)の2資格
NBAは昭和4年に発足した老舗の業界団体で、バーテンダー資格のなかでも最も権威のある資格として知られています。主催する資格は2種類で、いずれも年1回・11月頃に実施されます。
「バーテンダー呼称技能認定試験」は20問100点満点の学科試験のみで、アルコールを扱う飲食業に従事する20歳以上の方が受験できます。上位資格の「インターナショナル・バーテンダー呼称技能認定試験」は学科に加えてフルーツ・カッティングやシェークなどの実技試験があり、会員在籍3年以上・実務7年以上・25歳以上のNBA会員限定となります。
NBAは資格認定制度を最重要の制度と位置づけており、取得した認定証書はお客様に対する技術者の証明として社会的評価が高まっています。
引用元:一般社団法人 日本バーテンダー協会 呼称技能認定試験
日本ホテルバーメンズ協会(HBA)の5資格
HBAは全国のホテルバーテンダーを中心に、カクテル文化の発展と育成を目的とした団体です。段階的にステップアップする5段階の資格制度を運営しており、ホテルやレストランでの就職・昇進時に評価されやすいのが特徴です。
- HBAカクテルアドバイザー:通信講座型で自宅受験可能。非会員でも20歳以上なら受験できる入門資格
- HBAビバレッジアドバイザー:筆記試験。HBAバーテンダーを目指す第一関門
- HBAバーテンダー:筆記+実技試験。会員限定で実務経験2年以上が必要
- HBAシニアバーテンダー:筆記試験。実務10年以上・28歳以上が受験資格
- HBAマスターバーテンダー:支部長推薦+筆記+論文+面接。40歳以上の最上位資格
プロフェッショナル・バーテンダーズ機構(PBO)の1資格
PBOはバーテンダーの育成と資質向上を目的としたNPO法人で、「プロフェッショナル・バーテンダー資格認定試験」を実施しています。試験は筆記試験とカクテル調合の実技試験の2種類で構成され、知識試験は酒類に関する問題が全体の約80%を占めるのが特徴です。
実技試験では4分以内にシェイクとステアによるスタンダードカクテルを1杯ずつ作る必要があります。合格者はPBO主催の全国バーテンダーズコンペティションMVBカップへの出場資格を得られるため、大会志向のバーテンダーに向いた資格です。
その他の関連資格
上記3団体以外にも、日本インストラクター技術協会(JIA)の「カクテルバーテンダー資格」、ジャパンバーテンダースクール(JFB)の「ジュニア/シニアバーテンダーライセンス」など、スクール認定や専門団体の資格が存在します。
加えて、バーテンダーの知識の幅を広げたい場合は、日本ソムリエ協会のソムリエ資格、唎酒師(ききさけし)、ビア&スピリッツアドバイザー協会(BSA)のスピリッツアドバイザーなどの取得もおすすめです。ワインや日本酒の提案力が加わることで、接客の質と客単価を高められます。
バーテンダー資格の費用・合格率・難易度を比較

- 初級資格の合格率は約90%と比較的取得しやすい
- HBAシニアバーテンダーの合格率は約60%で推移
- 上級資格は実務経験と年齢要件が最大の壁になる
初心者向けは合格率が高く独学可能
NBAバーテンダー呼称技能認定試験とHBAカクテルアドバイザーは、初心者でも挑戦しやすい資格として位置づけられています。NBAの試験は公式テキスト「改訂 NBA新オフィシャル・カクテルブック」から出題されるため、出題範囲が明確で独学対策が可能です。
HBAカクテルアドバイザーは36,000円の通信講座に申し込むと教本・資料・実技用DVDが届き、添削問題を提出後に自宅で受験できる仕組みです。実技試験がないため、仕事をしながら取得を目指せる点が人気の理由です。
上級資格は実務経験と年齢要件が壁
上位資格になるほど、試験の難しさよりも受験資格を満たすまでの時間がハードルになります。NBAインターナショナル・バーテンダー呼称技能認定試験は、NBA会員で協会在籍3年以上かつ実務経験7年以上・25歳以上でなければ受験できません。
HBAシニアバーテンダーは実務10年以上・28歳以上、最上位のHBAマスターバーテンダーは支部長の推薦と40歳以上という厳格な条件が設定されています。これらの資格を目指すには、20代前半から計画的にキャリアを積む必要があります。
公開されている合格率の目安
NBAとHBAは公式の合格率を公表していませんが、業界内の情報を整理すると次のような傾向が見られます。NBAバーテンダー呼称技能認定試験は約90%と高い合格率が報告されており、講習内容をしっかり復習すれば合格できる水準です。
一方、HBAの上位資格は年によって変動があるものの、HBAシニアバーテンダーの合格率は概ね60%前後で推移しているとされます。ビバレッジハンドラー技能講習会を受講した層ほど合格率が高くなる傾向があり、事前対策の質が結果を左右する資格と言えるでしょう。
バーテンダー資格の3つの取得方法

取得方法はスクール・独学・通信講座の3つに大別されます。費用と学習時間、実技習得の必要性を照らし合わせて自分に合う方法を選びましょう。
| 取得方法 | 費用目安 | 期間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 専門学校・スクール | 50万〜200万円 | 半年〜2年 | 未経験で実技から学びたい人 |
| 独学 | 参考書代+受験料 | 3〜6か月 | 現場経験があり筆記対策のみ必要な人 |
| 通信講座 | 3万〜10万円 | 2〜6か月 | 働きながら計画的に学びたい人 |
スクール・専門学校で学ぶ
スクール・専門学校で学ぶ方法は、未経験者が体系的に技術を習得できる最も確実なルートです。シェーカーの振り方、材料の計量、氷の割り方、フルーツカットといった基本技術を、現役バーテンダーの講師から直接指導してもらえます。
ジャパンバーテンダースクールのように、卒業生向けに独自のライセンス試験を用意している学校もあります。費用は専門学校で年間100万円前後かかるため負担は大きいものの、就職サポートやNBA会員校の優遇制度を活用できる点は大きなメリットです。
独学でテキストから学ぶ
独学の最大の魅力は、費用を最小限に抑えられることです。NBAの試験対策であれば、公式テキストの「改訂 NBA新オフィシャル・カクテルブック」と受験料だけで合計1万〜2万円程度で取得を目指せます。
仕事と両立したい方、自分のペースで学習したい方に向いた方法ですが、実技試験のある上位資格では動画教材や現場での練習が欠かせません。筆記試験のみの初級資格から挑戦するのが現実的なステップです。
通信講座を活用する
通信講座は独学とスクールの中間に位置する学習方法です。HBAカクテルアドバイザーのように、講座受講と資格取得が一体化したプログラムを選べば、カリキュラムに沿って学習を進められます。
プロの講師が作成したテキスト・DVDを使いながら添削を受けられるため、独学に挫折しやすい人にも適しています。受講料は3万円〜10万円程度で、通学に比べてコストを抑えつつ体系的な知識を得られるバランスの良さが魅力です。
バー開業で必要な法的資格と届出

バーテンダー民間資格とは別に、バーを開業する場合は食品衛生責任者・防火管理者・深夜酒類提供飲食店営業届の3つが法的に必須です。取得漏れがあると営業許可が下りません。
食品衛生責任者は1万円で取得可能
食品衛生責任者は、バー経営を含む飲食店すべての食品取扱施設に配置が義務づけられる資格です。6時間の講習を受講すれば取得でき、費用は約1万円で済みます。自治体の食品衛生協会が定期的に実施しているため、希望の日程で受講しましょう。
栄養士・調理師・製菓衛生師などの有資格者は講習が免除されます。バー開業全体で必要な資格と届出の詳細は飲食店経営に必要な資格2つと届出7種もあわせて確認してください。
防火管理者が必要な店舗の条件
防火管理者は、収容人数30人以上の飲食店で選任が義務づけられる資格です。延床面積によって甲種(300㎡以上)と乙種(300㎡未満)に分かれ、費用はそれぞれ約4,000〜6,000円・約3,000〜5,000円です。
講習は日本防火・防災協会や各地域の消防署で実施され、甲種は2日間、乙種は1日で修了します。日程が限定されるため、物件契約後すぐに受講予約を入れるのが安全です。
深夜酒類提供飲食店の届出
深夜0時以降に酒類をメインで提供するバーや居酒屋は、バーの風営法に基づき、営業開始の10日前までに警察署へ「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出する必要があります。届出を怠ると風営法違反となり、営業停止処分の対象になります。
届出には店舗の図面・メニュー表・営業方法を記した書類が必要で、用途地域の制限(住居専用地域では深夜営業不可)もあわせて確認が必須です。開業の全体スケジュールと届出の時系列は飲食店開業の流れ8ステップで時系列に整理しています。
深夜営業の届出に加えて、接待行為の有無や店内の照明・個室の構造によっては風俗営業許可が必要になるケースもあります。
なお、ダーツマシンを設置するバーでは風営法の条件が通常のバーと異なります。詳しくはダーツバーの開業ガイドで解説しています。
バーテンダーの平均年収とキャリアパス
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、バーテンダーの平均年収は359万円(平均年齢44.2歳)で、独立開業すれば年収1,000万円超も視野に入ります。
厚労省データの平均年収359万円
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査では、バーテンダーの月額給与は272,500円、年間賞与は319,200円、これらを合わせた平均年収は3,589,200円となっています。平均勤続年数は9.6年、月間労働時間は171時間(超過労働13時間)です。
国税庁の民間給与実態統計調査による日本人の平均年収約458万円と比較すると、100万円ほど低い水準にとどまります。個人経営のバーではボーナスや福利厚生が支給されないケースも多く、ホテルや大手企業系列のバーのほうが安定した収入を得やすい傾向があります。
資格と経験でキャリアアップ
バーテンダーのキャリアアップは、資格取得とコンペティション入賞、そして独立開業という3つのルートが主流です。店長やチーフバーテンダー、エリアマネージャーへ昇進すると役職手当が加わり、年収420万〜490万円まで上がるケースもあります。
高級ホテルや外資系ラウンジでマネージャークラスに就けば、歩合やインセンティブを含めて年収500万〜600万円も現実的です。自分の店を持って繁盛させれば年収1,000万円超に到達するバーテンダーも存在しますが、独立には最低300万〜500万円のバー開業資金と、経営者としてのマネジメント力が求められます。
なお、カフェなど他のドリンク系職業のキャリア形成についてはバリスタになるには?資格・年収・3つのなり方も参考にしてください。
バーテンダーの資格に関するよくある質問
バーテンダー資格に関する代表的な疑問を5つ取り上げました。受験前の判断材料としてご活用ください。
Q
バーテンダーになるために資格は必須ですか?
A
いいえ、必須ではありません。バーテンダーに国家資格は存在せず、20歳以上であれば資格なしでバーで働き始めることが可能です。ただし、就職・転職時のアピール材料やコンペ参加条件、顧客からの信頼獲得のために、NBAやHBAの民間資格を取得する人が多くいます。
Q
バーテンダー呼称技能認定試験の合格率はどの程度ですか?
A
公式の合格率は公表されていませんが、業界内では約90%と高い合格率が報告されています。公式テキスト「改訂 NBA新オフィシャル・カクテルブック」から20問出題される学科試験で、事前に講習内容を復習すれば合格できる難易度です。ただし近年は出題内容が高度化する傾向もあるため、油断せず対策しましょう。
Q
バーテンダーの平均月収はいくらですか?
A
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、月額給与は272,500円、年間賞与を含めた平均年収は359万円です。初任給は月16万〜18万円程度からスタートし、店長クラスで月30万〜35万円、マネージャー職や独立後はさらに高い収入が期待できます。
Q
未経験からでもバーテンダー資格を取得できますか?
A
はい、取得可能です。HBAカクテルアドバイザーは実技試験がなく、通信講座で学びながら自宅受験できるため、未経験者の第一歩として最適です。また、ジャパンバーテンダースクールなどの専門学校を卒業すると、卒業生向けのライセンス試験を受けられます。現場経験を積みたい場合は、アルバイトから始めて2〜3年後に上位資格を目指すのが現実的です。
Q
バーを開業するのにバーテンダー資格は必要ですか?
A
バーテンダー資格自体は開業の要件ではありません。ただし、バー開業時は食品衛生責任者(約1万円)・防火管理者(収容30人以上の場合)・深夜酒類提供飲食店営業届(警察署)の3つが法的に必要です。民間のバーテンダー資格を持っていると技術の信頼証明になり、集客やスタッフ採用の際にプラスに働きます。
ダーツバーの開業など特殊業態の場合も、バーテンダー資格は法的要件ではなく任意です。同様に、ダイニングバーの開業でもバーテンダー資格は必須ではありませんが、カクテル提案力の向上に役立ちます。