小さなカフェ開業に必要な資格を調べている方に、最初にお伝えしたいことがあります。「資格がたくさん必要では」という不安は、ほぼすべての方が抱いている誤解です。
結論から言うと、10席以下のワンオペカフェなら必須の資格は食品衛生責任者の1つだけ。調理師免許も防火管理者も、法的に不要です。
小さなカフェ(10席以下・ワンオペ)なら、必須の資格は食品衛生責任者のみ。総コスト約3万円、最短1日で揃います。調理師免許も防火管理者も不要です。
| 構成 | 食品衛生責任者 | 飲食店営業許可 | その他 | 合計費用 | 期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 最小構成(10席以下・イートインのみ) | 10,000〜16,280円 | 16,000〜19,000円 | — | 約26,000〜35,000円 | 最短1〜2週間 |
| フル装備(テイクアウト+夜営業) | 10,000〜16,280円 | 16,000〜19,000円 | 菓子製造業14,000〜16,000円+防火管理者7,000〜8,000円 | 約47,000〜59,000円 | 1〜2か月 |
上の表で注目していただきたいのは「最小構成」の合計費用です。10席以下のワンオペカフェなら、資格にかかるお金は3万円程度で済みます。カフェ開業にかかる資金全体(物件・内装・設備等)については、カフェ開業にかかる資金の全体像をあわせてご覧ください。
この記事では以下の5つのポイントを、公的データと法的根拠をもとに解説します。
- 必須資格は食品衛生責任者の1つのみ(取得費用1〜1.6万円、最短1日)
- 防火管理者・調理師免許・建築確認申請・HACCPフル版の4つは不要
- 飲食店営業許可の取得は「保健所への事前相談」が最重要
- 営業スタイル次第で追加の届出が必要になるケースがある
- 最初の一歩は管轄保健所への電話による事前相談予約
この記事でわかること
- 食品衛生責任者|唯一の必須資格を最短1日で取得する方法
- 小さなカフェだから不要になる4つの資格・手続き
- 飲食店営業許可の取り方|保健所への事前相談がすべてを決める
- 条件次第で必要になる届出・許可の一覧
- あると有利な任意資格——コーヒーマイスターから簿記まで
- まとめ|最初の一歩は保健所への電話
- よくある質問 FAQ
カフェ開業に必要な資格の全体像(大規模・業態別)は、カフェ開業に必要な資格の全体像で解説しています。
目次
食品衛生責任者|唯一の必須資格を最短1日で取得する方法
食品衛生責任者は、小さなカフェ開業で唯一の必須資格です。
「どこで」「いくらで」「どのくらいかかるか」を、自治体ごとの違いを含めて解説します。
6時間の講習を受けるだけで取得できます。費用は1〜1.6万円。eラーニング対応の自治体なら自宅で完結します。
講習の内容・費用・期間——都道府県で違う受講料に注意
食品衛生責任者の養成講習は、各都道府県の食品衛生協会が実施する6時間の講習です。内容は以下の3科目で構成されています。
| 科目 | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| 食品衛生学 | 2.5時間 | 食中毒の原因・予防、食品の取り扱い |
| 公衆衛生学 | 0.5時間 | 衛生行政の仕組みと食品衛生の基礎 |
| 食品衛生法 | 3時間 | 法令の概要、HACCPの基礎、営業許可制度 |
上の表のとおり、難易度の高い試験はなく、6時間の受講を修了すると修了証が交付されます。
費用は自治体によって異なります。主要な都道府県の受講料は以下のとおりです。
| 地域 | 費用(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 東京都 | 12,000円 | — |
| 神奈川県 | 12,100円 | — |
| 群馬県 | 12,000円 | — |
| 大阪府 | 16,280円 | テキスト代3,080円含む |
上の表のとおり、大阪府は東京都より約4,000円高くなっています。テキスト代が受講料に含まれているためです。開業予定地の食品衛生協会のサイトで、正確な金額を必ず確認してください。
食品衛生責任者の設置義務は、食品衛生法第55条に定められています。
都道府県知事の許可を受けなければならない営業を営もうとする者は、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を置かなければならない。(食品衛生法に基づく)
引用元:e-Gov法令検索「食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)」
実際に講習を受けた知人に話を聞いたところ、「テスト形式があるけど、まず落ちない。6時間座っているのが大変なくらい」とのことでした。合否を心配する必要はほとんどありません。
eラーニング対応の都道府県なら自宅で完結する
都道府県ごとの費用差を確認したところで、次は受講方法を見ていきます。実は、一部の自治体ではeラーニングによる受講が可能で、会場に行かずに自宅で完結させることができます。
2026年時点でeラーニングに対応している主な自治体は以下のとおりです。
- 東京都(東京都食品衛生協会)
- 大阪府
- 京都市
- 神戸市
- 千葉県
- 茨城県
- 岡山県
- その他、順次拡大中
eラーニングの主な特徴は以下のとおりです。
- 24時間いつでも受講可能(受講期間は申込から30日間が多い)
- カメラ付きのスマートフォン・タブレット・PCが必要(顔認証のため)
- 費用は会場受講とほぼ同額
- 修了証は郵送で届く
対応状況は各自治体によって異なります。最新の情報は東京都食品衛生協会のeラーニング案内ページや日本食品衛生協会のeラーニング案内ページでご確認ください。
講習が免除される人の一覧——調理師・栄養士は受講不要
eラーニングを含む受講方法を確認したところで、もう一つ知っておくべき情報があります。特定の資格・免許を持っている方は、養成講習の受講が免除されます。
免除の対象者は以下のとおりです。
- 調理師免許を持っている方
- 栄養士・管理栄養士の免許を持っている方
- 製菓衛生師の免許を持っている方
- 食品衛生管理者の資格を持っている方
- 医師・歯科医師・薬剤師・獣医師の免許を持っている方
- 大学・専門学校等で食品衛生学の課程を修了した方
特に注目してほしいのは調理師免許の欄です。調理師免許を持っている場合は講習が免除されるため、食品衛生責任者の受講料(約1万円)が不要になります。調理師免許は開業に必須ではありませんが、持っているなら講習費を節約できます。カフェ開業と調理師免許の関係についても参考にしてください。
小さなカフェだから不要になる4つの資格・手続き
小さなカフェ(10席以下・ワンオペ)なら、不要になる資格・手続きが4つあります。
ここまでで唯一の必須資格が食品衛生責任者だけだと確認しました。続いて、「なくていいもの」を法的根拠とともに整理します。
- 防火管理者——収容人員30人未満なら選任義務なし
- 調理師免許——「名称独占資格」だから開業に不要
- 建築確認申請——200m2以下の用途変更なら手続き不要
- HACCPフル版——小規模事業者は簡易版でOK
防火管理者・調理師免許・建築確認申請・HACCPフル版——小さなカフェ(10席以下・ワンオペ)なら、この4つはすべて不要になります。
| 項目 | 不要の条件 | 法的根拠 |
|---|---|---|
| 防火管理者 | 収容人員30人未満(10席+ワンオペ=12名程度) | 消防法第8条 |
| 調理師免許 | 調理行為に免許は不要(名称独占資格) | 調理師法第1条 |
| 建築確認申請 | 200m2以下の用途変更は確認申請不要 | 建築基準法(2019年改正) |
| HACCPフル版 | 従業員50人未満は簡易版で対応可能 | 食品衛生法(2021年改正) |
上の表で注目してほしいのは「不要の条件」の列です。いずれも「小さなカフェ(10席以下・ワンオペ)」という前提で不要になるものであり、規模が大きくなれば必要になる可能性があります。
私の経験では、この「不要リスト」を知っているかどうかで、開業準備のストレスがまったく変わります。「全部揃えなきゃ」という思い込みを早い段階で取り除けた人ほど、資金と時間を本当に重要な準備に集中できています。田舎での小さなカフェ開業を検討している方は、小さなカフェを田舎で開業するガイドもあわせてご覧ください。
防火管理者——収容人員30人未満なら選任義務なし
不要なものの中でも「絶対に必要だと思っていた」という声が最も多いのが防火管理者です。なぜ不要になるのかを、数値を使って説明します。
消防法第8条では、一定の収容人員以上の防火対象物に防火管理者の選任を義務付けています。飲食店の場合、その基準は「収容人員30人以上」です。
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消火、避難及び通報に必要な施設、設備及び器具の維持管理並びにその他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
引用元:e-Gov法令検索「消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第8条」
10席のカフェをワンオペで営業する場合、収容人員はどのように計算されるのかを見てみます。
| 算定要素 | 人数 |
|---|---|
| 固定式いす席 | 10名 |
| 従業員(ワンオペ) | 1名 |
| その他の部分(待合スペース3m2÷3.0m2/人) | 1名 |
| 合計 | 12名 |
上の表のとおり、合計12名なので30人未満です。したがって防火管理者の選任義務はありません。算定方法の詳細は東京消防庁の防火管理者資料および収容人員の算定方法(PDF)で確認できます。
テナントビルに入居する場合は要注意です。建物全体の収容人員で判定されるため、個別テナントが30人未満でも選任義務が発生する可能性があります。ビルオーナーまたは管轄の消防署に確認してください。
調理師免許——「名称独占資格」だから開業に不要
防火管理者と並んで「必要だと思っていた」という声が多いのが調理師免許です。結論から言うと、調理師免許がなくても飲食店の営業はできます。
調理師免許は「名称独占資格」です。「調理師」と名乗るために必要な資格であり、調理という行為自体を行う免許ではありません。調理師法第1条にも、免許の目的は「調理師の資格の付与」であり、「調理の業務の規制」ではないと定義されています。カフェ開業と調理師免許の関係についてはこちらで詳しく解説しています。
| よくある誤解 | 事実 |
|---|---|
| 「カフェを開業するには調理師免許が必要」 | 不要。飲食店営業許可と食品衛生責任者があれば開業できる |
| 「調理師免許がないと調理できない」 | 不要。調理行為に免許は不要(名称独占資格のため) |
| 「持っていると有利」 | 一部メリットあり(食品衛生責任者の講習免除、融資審査での加点) |
上の表の3行目に示したとおり、調理師免許を持っている場合のメリットもあります。食品衛生責任者の講習が免除されるため受講料(約1万円)が不要になり、金融機関の融資審査で加点評価される場合もあります。ただし、持っていないからといって開業に支障はありません。資格なしでカフェを開業できるかについてはこちらも参考にしてください。
建築確認申請——200m2以下の用途変更なら手続き不要
調理師免許に続いて、自宅や既存の建物でカフェを開く際に「必要かも」と悩む方が多いのが建築確認申請です。
住宅や事務所だった建物を飲食店に用途変更する場合、建築基準法上の「用途変更」の手続きが必要になることがあります。ただし、2019年の建築基準法改正により、延べ面積200m2以下の建物については確認申請が不要になりました。
用途変更に係る確認申請が必要な規模の基準が100m2超から200m2超に変更されました。
引用元:国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)の概要リーフレット(PDF)」
小さなカフェの物件(10〜30坪 = 約33〜99m2)は、ほとんどの場合200m2を大幅に下回ります。つまり、用途変更の確認申請は不要になる可能性が高いです。ただし、建物の構造や自治体の条例によって異なる場合があるため、念のため管轄の建築指導課に確認することをおすすめします。
HACCPフル版——小規模事業者は簡易版でOK
建築確認申請に続いて、「聞いたことはあるけど何が必要かわからない」という声が多いのがHACCPです。
2021年の食品衛生法改正により、すべての食品事業者にHACCPに基づく衛生管理が義務付けられました。しかし、従業員50人未満の小規模事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(簡易版)への対応で問題ありません。
簡易版は厚生労働省が業種別の手引書を無料で公開しており、テンプレートに沿って記入するだけで作成できます。
- HACCP簡易版の概要:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」
- 小規模飲食店向け手引書(無料PDF):厚生労働省「小規模な飲食店向け衛生管理計画手引書(PDF)」
具体的な作成手順はこの後の「HACCP衛生管理計画——テンプレートに沿って記入するだけ」でも解説します。
飲食店営業許可の取り方|保健所への事前相談がすべてを決める
飲食店営業許可は、食品衛生責任者と並んで必ず取得しなければならない許可です。
ここまでで資格の全体像(必須1つ+不要4つ)を把握しました。続いて、開業前に必ず通る「飲食店営業許可」の取得手順を見ていきます。
- 取得フロー6ステップ——工事前の事前相談が最重要
- 施設基準チェックリスト——シンク・手洗い・換気の要件
- 手数料と有効期間の自治体差——東京・大阪・神奈川を比較
- 2021年食品衛生法改正で何が変わったか
内装工事の前に、必ず管轄の保健所に事前相談してください。工事後に施設基準を満たしていないと、追加工事で数十万円の無駄が発生します。
取得フロー6ステップ——工事前の事前相談が最重要
飲食店営業許可の取得は、以下の6ステップで進みます。詳細は厚生労働省「食品等の営業許可・届出制度等について」でも確認できます。
Step 1:保健所への事前相談(内装工事の前・図面段階)
最も重要なステップです。物件を決めたら、内装工事に着手する前に管轄の保健所に図面を持参して事前相談を行います。シンクの槽数、手洗い設備の位置、換気設備の仕様などを事前に確認しておくことで、工事後のやり直しを防げます。
Step 2:食品衛生責任者の資格取得
事前相談と並行して、または先に食品衛生責任者の養成講習を受講しておきます。営業許可申請の書類として修了証が必要になります。
Step 3:内装工事(施設基準を満たすよう施工)
Step 1の事前相談で確認した施設基準に沿って内装工事を進めます。施工業者に事前相談の結果を共有しておくとスムーズです。
Step 4:営業許可申請書類の提出
内装工事が完了したら、以下の書類を保健所に提出します。
- 営業許可申請書
- 施設の平面図(客席・調理場・トイレの配置を含む)
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類(修了証のコピー等)
- 申請手数料(自治体により異なる。16,000〜19,000円程度)
Step 5:保健所による施設検査(申請後1〜2週間)
申請書を受理された後、保健所の職員が実際に施設に来て検査を行います。施設基準を満たしているかどうかをチェックします。
Step 6:営業許可証の交付(検査合格後1〜2週間)
検査に合格すると、営業許可証が交付されます。許可証を受け取ってから営業を開始してください。Step 1の事前相談から許可証交付まで、順調に進めば1〜2か月が目安です。
施設基準チェックリスト——シンク・手洗い・換気の要件
取得フローを確認したところで、保健所が検査で確認する施設基準の具体的な内容を見ていきます。事前相談前の予備知識として把握しておくと、打ち合わせがスムーズになります。
| チェック項目 | 内容 | 小規模カフェでの注意点 |
|---|---|---|
| 調理場と客席の区画 | 壁・扉等で明確に仕切る | カウンター式でも区画が必要 |
| 手洗い設備 | 調理場内に1か所以上(流水式・ハンドソープ常備) | レバー式・センサー式が推奨 |
| シンク | 2槽以上(食材洗浄用・食器洗浄用) | 食器洗浄機があれば1槽でOKの自治体もある |
| 換気設備 | 十分な換気が可能な設備 | 小規模でも必須 |
| 防虫・防鼠設備 | 網戸、排水口の蓋等 | 古民家の場合は特に注意 |
| トイレの手洗い | トイレ専用の手洗い設備 | 調理場の手洗いとは別に必要 |
| 床・壁・天井 | 清掃しやすい材質 | 木造の場合は保健所に要相談 |
| 冷蔵設備 | 食材保管に十分な容量。温度計設置 | — |
上の表で特に注意してほしいのは「シンク」の欄です。2槽シンクが原則ですが、食器洗浄機があれば1槽で良いとする自治体もあります。この違いが数万円のコスト差になるため、必ず管轄の保健所に確認してください。施設基準の詳細は、厚生労働省「食品等の営業許可の施設基準について(PDF)」および飲食店営業の施設基準詳細(PDF)でも確認できます。
手数料と有効期間の自治体差——東京・大阪・神奈川を比較
施設基準の内容を確認したところで、申請にかかる手数料と許可の有効期間を見ていきます。
| 自治体 | 申請手数料 | 有効期間 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 東京都(新宿区の例) | 16,000円 | 5〜8年(業態・施設状況による) | 参考:新宿区の営業許可手数料一覧 |
| 神奈川県 | 約16,000円程度 | 5〜8年 | 自治体により異なる |
| 大阪市 | 約16,000円程度 | 5〜8年 | 参考:大阪市の食品衛生関係申請手数料 |
上の表のとおり、申請手数料は自治体間でそれほど大きな差はありませんが、有効期間が異なります。2021年の改正後は5〜8年の許可が多くなっています。更新を忘れると営業継続ができなくなるため、許可証に記載された有効期限を必ず確認してください。
個人的には、保健所の事前相談は「行って損することが一切ない手続き」だと思っています。無料で、担当者も質問に丁寧に答えてくれます。「まだ開業するかどうか迷っている段階」でも、相談に行くことはできます。実際に保健所に足を運んでみると、「思ったより手続きはシンプルだ」という感想を持つ方がほとんどです。
2021年食品衛生法改正で何が変わったか
手数料と有効期間を確認したところで、2021年の食品衛生法改正による変更点を整理します。改正前に書かれたサイトの情報は、この点で古くなっている場合があります。
2021年改正の3大変更点は以下のとおりです。
変更点1:許可制度の統一化
旧・喫茶店営業許可が廃止され、飲食店営業許可に一本化されました。以前は「喫茶店営業許可」でコーヒー・ジュースのみ提供可能でしたが、現在は飲食店営業許可1種類に統合されています。
変更点2:施設基準の全国統一化
厚生労働省令に基づく施設基準が全国統一化されました。ただし、自治体の条例による上乗せ基準は引き続き存在するため、最終的な確認は管轄保健所が必要です。
変更点3:菓子製造業許可の範囲拡大
改正前は菓子製造業許可のみでは店内飲食・ドリンク提供ができませんでしたが、改正後は一定の条件のもとでドリンク提供・イートインが可能になりました。
食品衛生法が改正され、令和3年6月に完全施行。許可業種が統合・再編され、施設基準が全国統一されました。HACCPに沿った衛生管理の制度化も同時に施行されました。
引用元:厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律について」
条件次第で必要になる届出・許可の一覧
飲食店営業許可に加えて、営業形態によっては追加の届出や許可が必要になります。
ここまでで必須の手続き(食品衛生責任者+飲食店営業許可)を確認しました。続いて、カフェの営業スタイルによって追加で必要になる届出を整理します。
- 菓子製造業許可——テイクアウト販売するなら必要
- 深夜酒類提供飲食店営業届出——カフェバーを検討するなら確認
- 食品表示——容器包装で販売する商品には義務あり
- 防火対象物使用開始届出書・開業届——小規模でも必須の届出
- HACCP衛生管理計画——テンプレートに沿って記入するだけ
| 届出・許可 | 必要になる条件 | 届出先 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 菓子製造業許可 | 焼き菓子・パン等をテイクアウト販売する場合 | 保健所 | 14,000〜16,000円 |
| 深夜酒類提供飲食店営業届出 | 深夜0時以降に酒類を提供する場合 | 警察署(生活安全課) | 無料 |
| 食品表示 | 容器包装に入れて販売する食品がある場合 | (届出不要。表示義務の遵守) | — |
| 防火対象物使用開始届出書 | 全店舗必須(防火管理者が不要でも必要) | 消防署 | 無料 |
| 個人事業の開業届 | 個人事業として開業する場合 | 税務署 | 無料 |
上の表で特に注意してほしいのは「防火対象物使用開始届出書」の欄です。防火管理者の選任が不要な小規模カフェでも、この届出は全店舗に必要です。見落としやすいので注意してください。
菓子製造業許可——テイクアウト販売するなら必要
「コーヒーとケーキを売りたい」「焼き菓子をテイクアウトで販売したい」という方が特に注意すべきなのが菓子製造業許可です。
焼き菓子・パン・クッキーなどを容器包装に入れてテイクアウト販売する場合は、飲食店営業許可とは別に菓子製造業許可が必要です。ただし、注文を受けてその場で提供する場合(イートイン)は飲食店営業許可の範囲で対応できます。
2021年の食品衛生法改正による大きな変更点として、菓子製造業許可のみでドリンク提供・イートインが可能になりました。「焼き菓子とコーヒーのテイクアウト専門店」を想定している場合は、菓子製造業許可だけで営業できる可能性があります(詳細は管轄保健所に確認)。詳しくは厚生労働省「営業許可業種の解説(PDF)」をご覧ください。
私が開業を手伝った方の中には、菓子製造業許可を知らずにテイクアウト販売を始めてしまい、後から保健所に指摘されたケースがありました。開業前に営業スタイルをしっかり整理しておくことが重要です。
深夜酒類提供飲食店営業届出——カフェバーを検討するなら確認
菓子製造業許可の次に確認が必要なのが、深夜の酒類提供に関する届出です。
「カフェ」として昼間に営業する分には関係ありませんが、「カフェバー」として深夜0時以降も酒類を提供する場合は、「深夜酒類提供飲食店営業届出」が必要になります。届出の主な要件は以下のとおりです。
- 届出期限:営業開始の10日前まで
- 届出先:所轄の警察署(生活安全課)
- 費用:無料
- 施設要件:客室面積9.5m2以上、照度20ルクス以上
届出様式や手続きの詳細は警視庁「深夜酒類提供飲食店営業届出」(東京都の場合)で確認できます。
食品表示——容器包装で販売する商品には義務あり
深夜営業の確認と並んで、テイクアウト販売を検討している方が確認すべきなのが食品表示の義務です。
容器包装に入れた状態で食品を販売する場合、食品表示法に基づく表示義務があります。必要な表示項目は以下のとおりです。
- 名称
- 原材料名
- 添加物
- 内容量
- 賞味期限または消費期限
- 保存方法
- 製造者名・住所
- 栄養成分表示
- アレルゲン(特定原材料等)
一方、以下の場合は表示義務の対象外です。
- 注文を受けてその場で調理・提供する食品(イートイン)
- 容器包装に入れない状態での対面販売
詳細は消費者庁「食品表示制度」および食品表示実践マニュアル(PDF)をご参照ください。
防火対象物使用開始届出書・開業届——小規模でも必須の届出
食品表示の義務を確認したところで、資格・許可以外で必要な届出を2つ確認します。どちらも費用は無料ですが、期限内に提出する必要があります。
防火対象物使用開始届出書(消防署)
店舗の使用開始7日前までに、管轄の消防署に届出が必要です。防火管理者の選任が不要な小規模カフェでも、この届出は全店舗に義務付けられています。届出様式は東京消防庁(目黒消防署の例)からダウンロードできます。管轄消防署のウェブサイトも確認してください。
個人事業の開業届(税務署)
個人事業として開業する場合は、開業日から1か月以内に所轄の税務署に開業届を提出します。青色申告承認申請書も同時に提出しておくと、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。詳細は国税庁「個人事業の開業届出等手続き」でご確認ください。
HACCP衛生管理計画——テンプレートに沿って記入するだけ
最後に、義務化されているにもかかわらず詳細をほとんどのサイトが解説していないHACCP衛生管理計画の作成手順を説明します。
小規模事業者向けの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は、以下の3ステップで作成します。
Step 1:衛生管理計画の作成
厚生労働省が無料公開している手引書のテンプレートを使い、メニューを以下の3グループに分類します。
- グループ1:非加熱調理品(生野菜のサラダ等)
- グループ2:加熱調理品(コーヒー・焼き菓子等)
- グループ3:加熱後に冷却する食品(冷製スープ等)
各グループに対して「何を」「いつ」「どのように」管理するかを記録用紙に記入します。
Step 2:計画に基づく実施
作成した衛生管理計画に沿って、日々の衛生管理を実施します。「今日から記録を始める」という意識を持つだけで大きく前進します。
Step 3:記録の保存
実施内容を記録し、一定期間保存します。保健所の指導が入った際に提示できる状態にしておくことが重要です。
手引書とテンプレートは無料でダウンロードできます。
あると有利な任意資格——コーヒーマイスターから簿記まで
法的に必須ではなくても、持っておくと開業後の経営や専門性アピールに役立つ資格があります。
ここまでで必須の資格・届出と、条件付きの届出を全て確認しました。最後に、必須ではないけれど取得を検討する価値のある資格を紹介します。なお、カフェに関連する資格の詳細な一覧はカフェに関連する資格の一覧でもまとめています。
| 資格名 | 認定団体 | 費用 | 期間 | 難易度 | メリット |
|---|---|---|---|---|---|
| コーヒーマイスター | SCAJ | 39,000円 | 約3か月 | 中 | スペシャルティコーヒーの専門知識を証明 |
| JBAバリスタライセンス Level 1 | JBA | 37,000〜40,000円 | 2日間 | 中〜高 | エスプレッソ抽出技術の証明 |
| コーヒースペシャリスト | フォーミー等 | 38,500円 | 1〜2か月 | 低 | 基礎知識の体系的な習得。初心者向け |
| コーヒーコーディネーター | 日本創芸学院 | 70,400円 | 約6か月 | 低 | 開業ノウハウも含む総合学習 |
| 日商簿記3級 | 日本商工会議所 | 受験料2,850円+テキスト代 | 2〜3か月 | 中 | 経営・会計管理に必須レベルで有用 |
上の表で特に注目してほしいのは日商簿記3級です。受験料は3,000円以下で、個人事業の経営管理に直結します。「何か資格を取りたいが何を優先すべきか」と迷っている方には、カフェ専門の資格よりも簿記3級の方が実務で役立つ場面が多いと感じています。
まとめ|最初の一歩は保健所への電話
この記事で解説した内容を最後にまとめます。
この記事のまとめ
- 小さなカフェ(10席以下・ワンオペ)に必須の資格は食品衛生責任者のみ
- 防火管理者・調理師免許・建築確認申請・HACCPフル版の4つは不要
- 総コストは約26,000〜35,000円、最短1〜2週間で揃う
- 飲食店営業許可の取得には、内装工事前の保健所事前相談が最重要
- テイクアウト販売・深夜営業・容器包装販売では追加の届出が必要
この記事を読んで一つだけ行動するなら、開業予定地の管轄保健所に電話して、事前相談の予約を取ってください。それが開業への最初の一歩です。保健所の事前相談は無料で、担当者も丁寧に対応してくれます。「まだ迷っている段階」でも、話を聞きにいくだけでも構いません。
資格に関連する情報を他の切り口でも確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
- カフェ開業にかかる資金の全体像——資格以外のコスト(物件・内装・設備・運転資金)の詳細
- 小さなカフェを田舎で開業するガイド——田舎・地方での立地・コストの詳細
- カフェ開業はやめとけと言われる理由——リスク・廃業データの詳細
- カフェ開業は甘いのか——現実的な経営判断のための情報
- 女性ひとりでカフェを開業するには——ワンオペ・女性目線の開業ガイド
よくある質問 FAQ
カフェを開くには資格が必要ですか?
はい。食品衛生責任者の資格と飲食店営業許可が必須です。食品衛生責任者は1日の講習(約6時間)で取得でき、費用は1〜1.6万円です。調理師免許は法的に不要です。カフェを開くのに必要な資格の詳細はカフェを開くのに必要な資格でも解説しています。
小さいお店を開きたいのですが、必要な資格はありますか?
小さなカフェ(10席以下)なら、必須の資格は食品衛生責任者のみです。収容人員30人未満のため防火管理者は不要で、調理師免許も法的に不要です。資格取得の総コストは約3万円で済みます。
自宅カフェは違法ですか?
自宅でカフェを開くこと自体は違法ではありません。ただし、都市計画法の用途地域の確認が必要です(第一種低層住居専用地域等では飲食店営業が制限される場合があります)。また、200m2以下の建物であれば用途変更の建築確認申請は不要です(2019年建築基準法改正)。飲食店営業許可は必要なので、管轄の保健所に事前相談してください。
小さなカフェを開業するにはいくら必要ですか?
資格取得だけなら約26,000〜35,000円(食品衛生責任者の養成講習1〜1.6万円+飲食店営業許可の申請手数料1.6〜1.9万円)です。テイクアウト販売や深夜営業を行う場合はさらに追加の届出費用がかかりますが、それでも合計6万円以下で全て揃います。開業資金全体(物件・内装・設備・運転資金を含む)についてはカフェ開業にかかる資金の全体像で詳しく解説しています。