「居酒屋を経営してみたいけれど、実際にどのくらい稼げるのだろう」「開業準備は何から始めればいいのか見当がつかない」——そんな不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
居酒屋オーナーの平均年収は627万円とされ、経営次第では1,000万円超も狙える業態です。この記事では、居酒屋経営のリアルな収益構造から、必要な資格・届出、開業までの5ステップ、そして黒字経営を続ける5つの条件までを網羅的に解説します。
年収・利益率のデータ、具体的な開業手順、失敗を防ぐ数値管理の方法まで順を追ってまとめていますので、これから居酒屋経営を目指す方はぜひ最後までお読みください。
目次
居酒屋経営の年収と利益率の実態
- 居酒屋オーナーの平均年収は627万円、規模によって300万〜1,000万円超と幅がある
- 営業利益率は5〜15%で、FL比率60%以下が黒字経営の目安
- ドリンク比率を高め原価率30%以下に抑えることで利益を確保できる
居酒屋は飲食業の中でも客単価が高く、利益を出しやすい業態といわれています。しかし、実際のオーナー年収や利益率はどの程度なのでしょうか。ここでは公的データや業界調査をもとに、居酒屋経営のリアルな収益構造を解説します。

オーナーの平均年収は627万円
経済専門誌「日経レストラン」の調査によると、居酒屋オーナーの平均年収は627万円です。国税庁の「民間給与実態統計調査」では給与所得者の平均年収が443万円とされており、居酒屋経営者はこれを約180万円上回っています。
ただし年収の幅は非常に大きく、規模や経営スタイルによって大きな差が生まれます。以下は規模別の年収目安です。
| 経営スタイル | 月商の目安 | 年収の目安 |
|---|---|---|
| 小規模(10坪以下・1人経営) | 80万〜150万円 | 300万〜500万円 |
| 中規模(15〜20坪・スタッフ2〜3名) | 200万〜400万円 | 500万〜800万円 |
| 繁盛店(20坪以上・スタッフ5名以上) | 500万〜800万円 | 800万〜1,200万円 |
| 多店舗経営(2〜3店舗) | 店舗合計1,000万円以上 | 1,000万円超 |
年収1,000万円を単一店舗で達成するには月商840万円以上が必要で、現実的には多店舗展開が近道です。まずは1店舗目を安定軌道に乗せ、仕組みを構築してから2店舗目に着手するのが堅実な方法といえます。
営業利益率は5〜15%が目安
経済産業省のデータによると、飲食店全体の平均営業利益率は8.6%です。個人経営の居酒屋では10〜15%を確保できれば良好な経営状態といえます。
たとえば月商300万円の居酒屋で営業利益率10%を達成した場合、月の手残りは30万円です。ここにオーナーの役員報酬を加えると、年収ベースでは500万〜600万円前後になります。利益率を高めるためには、後述する原価管理と人件費のコントロールが不可欠です。
FL比率60%以下が黒字の条件
居酒屋経営で最も重視すべき指標がFL比率です。FはFood(食材原価)、LはLabor(人件費)を指し、この2つの合計が売上の何%を占めるかを表します。
| 指標 | 理想値 | 危険水域 |
|---|---|---|
| 原価率(F) | 28〜32% | 35%以上 |
| 人件費率(L) | 20〜25% | 30%以上 |
| FL比率 | 55%以下 | 65%以上 |
| 家賃比率(R) | 10%以下 | 15%以上 |
FLR(食材原価+人件費+家賃)を70%以内に収めれば、営業利益率10〜15%を確保できます。日々の売上・原価・人件費を記録し、週単位でFL比率を確認する習慣をつけましょう。
居酒屋経営が難しいとされる5つの理由
- 飲食業の3年以内廃業率は約70%と他業種より突出して高い
- 競合の多さ・原材料費の高騰・人材不足が経営を圧迫する
- リスクを正しく理解した上で対策を講じれば生き残れる
「居酒屋経営は難しい」「やめとけ」という声がインターネット上には数多く存在します。実際に居酒屋を含む飲食業は廃業率が高い業種ですが、その理由を正しく理解し対策を講じれば、リスクを大幅に下げることが可能です。
飲食業の廃業率は3年で約70%
中小企業庁の「小規模企業白書」によると、「宿泊業・飲食サービス業」は全業種の中で最も廃業率が高い業種です。一般的に飲食店は開業3年以内で約70%、5年で約80%、10年では90%以上が廃業するといわれています。
東京商工リサーチの調査では、飲食業の倒産件数のうち「酒場、ビヤホール」に分類される居酒屋が最多を占めています。開業のハードルが低い分、準備不足のまま参入してしまうケースが多いことが背景にあります。飲食業の厳しさについて詳しく知りたい方は飲食店の廃業率と生き残る対策もあわせてご覧ください。
競合が多く差別化しにくい
居酒屋は「安くておいしい」ことが当たり前とされる業態のため、価格での差別化が難しいという特徴があります。同エリアに似たコンセプトの店が複数あれば、顧客の奪い合いが起こり、価格競争に陥りやすいのが現実です。
生き残るためには「〇〇専門」「〇〇産にこだわる」といった独自のコンセプトを打ち出し、他店にはない体験価値を提供する必要があります。
原材料費と人件費が高騰している
近年、食材や光熱費の値上がりが飲食店の利益を大きく圧迫しています。原材料費の高騰は原価率を押し上げ、FL比率の「F」が数%上がるだけでも利益が大幅に減少します。
さらに最低賃金の引き上げにより人件費も上昇傾向にあります。従来の「気合と根性」型の経営では対応が難しく、仕入れの見直しやメニュー構成の最適化といった戦略的なコスト管理が必要です。
人材の確保が困難になっている
飲食業界は「休日が少ない」「長時間労働」「賃金が低い」というイメージが根強く、慢性的な人手不足に悩まされている店舗が少なくありません。アルバイトの離職率が高く、教育コストがかさむことも経営を圧迫する要因です。
人材を定着させるには、労働環境の改善とオペレーションの効率化が不可欠です。セルフオーダーシステムや配膳ロボットなどのDXツールを導入し、少人数でも回せる仕組みを整えましょう。
天候や季節で売上が変動する
飲食店は天気や季節のイベントに売上が大きく左右されます。雨の日は客足が減り、忘年会シーズンと閑散期では売上に数倍の差が出ることもあります。
売上の波を平準化するには、テイクアウトやデリバリーへの対応、ランチ営業の導入など複数の収益チャネルを持つことが効果的です。閑散期にはイベントやフェアを企画して集客を補うことも重要なテクニックといえます。
居酒屋経営に必要な資格と届出
- 必須資格は「食品衛生責任者」と「防火管理者」の2つ
- 保健所の飲食店営業許可は開業前に取得が必要
- 深夜0時以降の営業は警察署への届出が別途必要
居酒屋の開業には調理師免許は不要ですが、いくつかの資格取得と届出が法律で義務付けられています。手続きの漏れがあると営業停止のリスクがあるため、必ず事前に確認しておきましょう。資格と届出の詳細は飲食店経営に必要な資格2つと届出7種で詳しく解説しています。

食品衛生責任者の取得方法
食品衛生責任者は、飲食店を営業する上で必ず1名配置しなければならない資格です。各都道府県の食品衛生協会が開催する約6時間の講習を受講すれば取得でき、受講料は10,000円前後です。
調理師免許や栄養士の資格を持っている場合は講習が免除されます。開業の2〜3か月前には受講を完了させておくとスムーズです。
防火管理者の選任が必要
収容人数が30人以上の店舗では、防火管理者の選任が義務付けられています。延床面積300㎡未満の場合は「乙種」、300㎡以上の場合は「甲種」の講習を受ける必要があります。
| 区分 | 対象 | 講習時間 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 乙種防火管理者 | 延床面積300㎡未満 | 約5時間(1日) | 7,000円前後 |
| 甲種防火管理者 | 延床面積300㎡以上 | 約10時間(2日) | 8,000円前後 |
小規模な居酒屋でも30人以上入る場合は対象となるため、店舗の図面をもとに収容人数を確認しておきましょう。
飲食店営業許可と深夜営業届出
居酒屋をオープンするには、管轄の保健所で飲食店営業許可を取得しなければなりません。申請から許可までは通常2〜3週間かかるため、内装工事の完了予定日から逆算して申請スケジュールを組みましょう。
さらに、深夜0時以降にお酒を提供する場合は「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」を警察署に提出する必要があります。届出には店舗の図面や営業方法の説明書類が求められるため、行政書士に依頼するケースも少なくありません。届出費用は自分で行えば無料ですが、行政書士への依頼費用は5万〜10万円が相場です。
居酒屋の開業手順5ステップ
居酒屋の開業にはコンセプト設計から開業届の提出まで最短でも3〜6か月が必要です。資金調達や物件探しに時間がかかるケースが多いため、余裕をもって1年前から準備を始めましょう。
居酒屋経営を始めるには、コンセプトの決定から開業届の提出まで段階的に準備を進める必要があります。ここでは5つのステップに分けて、各段階でやるべきことを具体的に紹介します。開業全体の流れは飲食店開業の流れ8ステップでも詳しく解説しています。

コンセプトとターゲットを決める
居酒屋経営で最初に取り組むべきはコンセプトの明確化です。「誰に・何を・どのように提供するのか」を具体的に言語化し、競合との差別化ポイントを定めます。
コンセプト設計では5W1Hのフレームワークが有効です。たとえば「30代の会社員カップルに(Who)、北海道産の海鮮と日本酒を(What)、カウンター8席の隠れ家空間で(Where・How)、金曜の仕事帰りに(When)、記念日の特別感を味わってもらう(Why)」のように具体化しましょう。
事業計画書を作成する
融資を受ける際にも必要となる事業計画書は、居酒屋経営の設計図です。以下の項目を盛り込みましょう。
- 事業の概要とコンセプト
- ターゲット顧客と市場分析
- 初期費用と資金調達方法
- 売上予測と損益シミュレーション
- 返済計画
売上予測は「客単価×席数×回転率×営業日数」で算出します。甘い見積もりは資金ショートの原因となるため、楽観・標準・悲観の3パターンでシミュレーションしておくと安全です。
資金を調達する
居酒屋の開業資金は500万〜1,500万円が目安です。自己資金だけで全額を用意するのは難しいため、多くの開業者は融資や補助金を活用しています。
| 調達方法 | 特徴 |
|---|---|
| 自己資金 | 総額の30%以上が目安。融資審査でも自己資金比率が重視される |
| 日本政策金融公庫 | 新規開業資金は最大7,200万円。低金利で飲食未経験者にも融資実績がある |
| 信用金庫・銀行 | 地域密着型の創業融資制度がある。保証協会の利用で審査が通りやすい |
| 補助金・助成金 | 返済不要。小規模事業者持続化補助金などが活用可能 |
開業資金の内訳や調達方法の詳細は居酒屋の開業資金は500万〜1,500万円|内訳・調達方法・節約術を解説をご覧ください。
物件を選んで内装を整える
物件選びは居酒屋経営の成否を左右する最重要ポイントです。立地と家賃のバランスを見極め、ターゲット層が多く通行するエリアを選びましょう。
初期費用を大幅に抑えるなら居抜き物件の活用がおすすめです。前のテナントが使っていた厨房設備や内装をそのまま引き継げるため、スケルトン物件と比較して数百万円のコスト削減が見込めます。
内装工事では店舗コンセプトとの一貫性を意識しつつ、必要最低限の投資にとどめることが重要です。開業後に追加・改善していく前提で、まずは衛生基準を満たす設備を優先しましょう。
メニューを開発して開業届を出す
コンセプトに沿ったメニューを開発し、原価率を計算します。居酒屋の全体の原価率は30%以下に収めることが基本ですが、すべてのメニューを一律で設定するのではなく、原価率の高い「集客メニュー」と原価率の低い「高収益メニュー」をバランスよく組み合わせることがポイントです。
メニューが決まったら、税務署に「個人事業の開業届出書」を提出します。法人として開業する場合は法人設立の登記が必要です。あわせて、前述の飲食店営業許可や深夜営業届出も忘れずに手続きしましょう。
居酒屋経営を成功させる5つの条件
- 独自のコンセプトで「ここにしかない価値」を作る
- 原価率・FL比率を日次で管理し数字で判断する
- SNSとGoogleビジネスプロフィールで集客を仕組み化する
居酒屋経営を長く続けるためには、開業前だけでなく開業後の運営力が問われます。ここでは、実際に利益を出し続けている居酒屋に共通する5つの成功条件を紹介します。

明確なコンセプトで差別化する
「お好み焼き専門居酒屋」「北海道直送の海鮮居酒屋」など、専門性やストーリーを打ち出すことで他店との差別化が図れます。コンセプトが明確であれば、内装・メニュー・接客スタイルに一貫性が生まれ、顧客に強い印象を与えられます。
コンセプトが曖昧な「何でもある居酒屋」は、結果的にどの層にも響かず埋もれてしまいがちです。ターゲットを絞り込むことで、かえってファンを獲得しやすくなります。
原価率30%以下に管理する
居酒屋の原価率の目安は30%以下です。ドリンク類は一般的にフードよりも原価が低いため、ドリンクの注文比率を高める工夫が利益確保に直結します。
原価管理の具体的な施策として、以下が効果的です。
- 仕入れ先を定期的に見直し、より安い業者を探す
- 食品ロスを削減するため仕入れ量を適正化する
- 原価率の高い看板メニューと低い高収益メニューを組み合わせる
- 季節の食材を活用し、旬のメニューで鮮度と原価を両立させる
SNSとGoogleマップで集客する
広告費をかけずに集客するなら、SNSとGoogleビジネスプロフィールの活用が最優先です。Instagramで料理や店内の写真を投稿し、Googleマップに店舗情報を登録するだけでも、近隣の見込み客にアプローチできます。
特にGoogleビジネスプロフィールでは口コミの評価が集客に大きく影響します。来店したお客様に口コミ投稿をお願いし、投稿された口コミには必ず返信することで信頼性が高まります。
リピーターを獲得する仕組みを作る
居酒屋の安定経営にはリピーターの存在が不可欠です。新規顧客の獲得コストはリピーターの維持コストの5倍以上かかるとされており、一度来店したお客様を再び呼び戻す仕組みが重要です。
リピーター獲得に効果的な施策は以下の通りです。
- LINE公式アカウントで来店後にお礼メッセージとクーポンを配信する
- 常連客の名前や好みを覚えてパーソナルな接客を心がける
- 季節限定メニューやイベントを定期的に実施して再来店の動機を作る
数値管理を徹底する
居酒屋経営が長続きするかどうかは、最終的に数字を見て経営判断できるかどうかで決まります。「なんとなく忙しいから大丈夫」という感覚経営では、気づいたときには赤字が膨らんでいるケースが少なくありません。
日々チェックすべき最低限の指標は以下の3つです。
| 指標 | チェック頻度 | 管理のポイント |
|---|---|---|
| 日次売上と客数 | 毎日 | 曜日別・天候別の傾向を把握する |
| 原価率(日次仕入額÷日次売上) | 毎日〜週次 | 30%を超えたら即座にメニュー・仕入れを見直す |
| FL比率 | 週次〜月次 | 60%を超えたら人員配置とシフトを見直す |
Googleスプレッドシートなどで売上・仕入れ・人件費を日次入力し、スタッフ全員が数字を共有できる環境を整えましょう。ある店舗では、この仕組みを導入した結果、3か月でFL比率が60%から52%に改善した事例もあります。
居酒屋経営に関するよくある質問
Q
居酒屋を経営するのに調理師免許は必要ですか?
A
調理師免許は不要です。居酒屋の経営に必須の資格は「食品衛生責任者」と「防火管理者(収容人数30人以上の場合)」の2つです。食品衛生責任者は約6時間の講習を受講するだけで取得できます。
Q
小さな居酒屋を1人で経営した場合の年収はどのくらいですか?
A
10坪以下の小規模居酒屋を1人で経営した場合、年収は300万〜500万円が目安です。人件費がかからない分、利益率は高くなりますが、営業時間や仕込みの限界から売上の上限も低くなります。原価管理とリピーター獲得を徹底することで、年収500万円以上も十分に狙えます。
Q
居酒屋経営で最も失敗しやすい原因は何ですか?
A
最も多い失敗原因は「運転資金の不足」です。開業直後は客足が安定せず、売上が想定を下回ることが一般的です。最低でも6か月分の運転資金を確保し、さらに生活費も別途用意しておくことが重要です。内装や設備にこだわりすぎて初期投資が膨らむケースも失敗の典型例です。
Q
個人経営の居酒屋とフランチャイズではどちらが良いですか?
A
個人経営はメニューや価格を自由に設定でき利益率も高くなる反面、すべてを自分で判断する必要があります。フランチャイズは知名度とノウハウを活かせる一方、ロイヤリティが発生しメニューの自由度が制限されます。飲食未経験者や経営初心者はフランチャイズの方がリスクを抑えやすいでしょう。
Q
居酒屋の開業資金を抑えるにはどうすればよいですか?
A
居抜き物件の活用が最も効果的で、スケルトン物件と比べて内装工事費を数百万円削減できます。そのほか、厨房機器の中古購入やリース活用、小規模でスタートして売上に応じて拡大する方法も有効です。10坪以下の居抜き物件であれば500万円以下での開業も実現可能です。