飲食店開業はやめたほうがいい——そう検索しているあなたは、開業の夢と現実のギャップに不安を感じている段階ではないでしょうか。
結論から言うと、飲食業は全業種のなかで最も廃業率が高く、2025年の倒産件数は900件超で過去最多を2年連続更新しています。しかし、データが示す「失敗の構造」を正しく理解し、必要な条件を揃えることができれば、生き残る側に入ることは十分に可能です。
飲食店の廃業率は全業種で最も高く、2025年の倒産件数は900件超で過去最多を2年連続更新しています。しかし、データが示す”失敗の構造”を理解し、正しい条件を揃えれば、生き残る側に入ることは十分に可能です。感情ではなくデータで判断するための材料を、この記事で網羅的に提供します。
この記事でわかる主なポイントは次の5点です。
- 飲食業の廃業率は全業種で最高水準——中小企業庁・日本政策金融公庫の一次データで確認
- 2025年の飲食店倒産は900件超・過去最多を2年連続更新(帝国データバンク)
- 「やめたほうがいい」と言われる理由は5カテゴリ・12項目に整理でき、事前に回避可能なものが多い
- キッチンカー・間借り・居抜き物件などの低リスク開業パターンが複数存在する
- 「やめたほうがいい人」と「挑戦すべき人」は8項目のチェックリストで自己診断できる
また、飲食店開業の全体的な手順・資金調達・必要な資格については、飲食店開業の全体的な手順や流れについてはこちらの記事をご覧ください。
この記事の構成は以下の通りです。
- 飲食店の廃業率と倒産件数——公的データが示す厳しい現実
- 飲食店開業を「やめたほうがいい」と言われる12の理由
- 飲食店経営で失敗するとどうなるか——実際の負債事例
- 飲食店が潰れる前兆と、ダメな経営者の特徴
- それでも飲食店を開業したいなら——成功する人の共通点
- 飲食店開業に使える補助金・助成金・融資制度
- 「やめたほうがいい人」判断チェックリスト8項目
- 飲食店の廃業率と10年生存率——データの正しい読み方
- よくある質問
- まとめ——「やめたほうがいい」かどうかはデータで判断する
目次
飲食店の廃業率と倒産件数——公的データが示す厳しい現実
飲食店の廃業率に関する公的データを、信頼できる一次ソースから整理します。
多くの情報源で「3年で70%が廃業」と書かれていますが、この数字の正確な出典を明示しているものはほとんどありません。この記事では全ての数字に出典を付けています。信頼できる機関の調査のみをご覧ください。
- 廃業率5.6%——中小企業庁が認定した「全業種ワースト」の数字
- 飲食業の5年廃業率14.7%——日本政策金融公庫パネル調査の現実
- 2025年の飲食店倒産900件超——帝国データバンクが記録した過去最多の連続更新
廃業率5.6%——中小企業庁が認定した「全業種ワースト」の数字
まず、最も権威ある公的データから確認します。中小企業庁が2025年版中小企業白書で公表した廃業率のデータによると、宿泊業・飲食サービス業の廃業率は5.6%で、全業種のなかで最も高い水準です。
宿泊業・飲食サービス業の廃業率は5.6%と、全業種で最も高い水準にある。
引用元:中小企業庁 2025年版中小企業白書 第8節 開業・倒産・休廃業
さらに踏み込んだデータもあります。小規模事業者の廃業意向を見ると、個人事業者の26.0%が廃業を意向していることが同白書で明らかになっています。4人に1人以上が「近い将来やめたい」と考えている業種というのは、他の業種では見られない深刻さです。
2024年の全業種における休廃業・解散件数は約7万件に達しました。これは過去最多水準であり、その内訳で最も多かったのが飲食業を含む「サービス業」カテゴリです。
飲食業の5年廃業率14.7%——日本政策金融公庫パネル調査の現実
中小企業庁の年次廃業率(5.6%)を確認したところで、次は別の切り口——開業後の追跡調査からのデータを見ていきます。
日本政策金融公庫が実施したパネル調査によると、2016年に創業した企業のうち2020年末までの5年間で廃業した割合は、飲食業・宿泊業で14.7%です。これは全業種平均の8.9%を大きく上回ります。
飲食業・宿泊業の5年廃業率は14.7%で、全業種平均(8.9%)の約1.7倍。開業者の32.7%が赤字基調で経営を続けている。
引用元:日本政策金融公庫 2024年度新規開業実態調査
この数字には重要な注意点があります。パネル調査の対象は公庫融資を受けた企業に限定されており、自己資金のみで開業した零細事業者は含まれていません。つまり、比較的資金力のある開業者でもこの廃業率であり、実際の市場全体ではさらに高い可能性があります。
また、開業者の32.7%が「赤字基調」で経営を続けているという数字も見逃せません。3人に1人がキャッシュを削りながら経営を続けている状態です。
2025年の飲食店倒産900件超——帝国データバンクが記録した過去最多の連続更新
廃業率(静的な割合)に続いて、今度は倒産件数(動的なトレンド)を見ていきます。
帝国データバンクが2026年1月に公表した2025年通年の飲食店倒産動向によると、2025年の飲食店倒産件数は900件超となり、前年の894件(それ自体が過去最多を更新していた)をさらに上回って、2年連続で過去最多を更新しました。
2025年の飲食店倒産は900件超とみられています。前年の894件(前年比+16.4%)をさらに更新し、過去最多を2年連続で記録したとされています。負債1億円未満の小規模・零細事業者が全体の約9割を占めるとみられます。
東京商工リサーチのデータでも同様の傾向が確認されています。2024年度の飲食業倒産件数は907件(前年同期比+7.7%)で、1989年以降の36年間で年度最多を更新しました。
2024年度の飲食業倒産は907件にのぼり、負債1億円未満の小・零細事業者が90.1%を占めるとされています。
以下の表で、倒産件数の年次推移を確認してください。
| 年度 | 帝国データバンク(件) | 東京商工リサーチ(件) | 前年比(帝国DB) |
|---|---|---|---|
| 2020年(コロナ禍) | 780 | — | — |
| 2023年 | 768 | — | — |
| 2024年 | 894 | 907(年度) | +16.4% |
| 2025年 | 900件超 | — | 2年連続過去最多 |
上の表で注目してほしいのは、2020年(コロナ禍)の780件すら下回っていた2023年から、わずか2年で900件超に急増している点です。コロナ禍の補助金・猶予が終わり、コスト高騰が直撃した結果が数字に表れています。
中小企業庁・日本政策金融公庫・帝国データバンク・東京商工リサーチ——4つの調査機関が一貫して示す結論は、飲食業が最もリスクの高い業種の一つであるということです。
飲食店開業を「やめたほうがいい」と言われる12の理由
飲食店開業が「やめたほうがいい」と言われる理由を、5つのカテゴリに分けて解説します。
ここまで廃業率と倒産件数の現実を確認しました。ここからは、なぜこれほど高い廃業率になるのか、その構造的な理由を12の項目で整理します。カテゴリ別に構造化して提示することで、「どれが致命的か」を自分で判断できるようにします。
構造的に利益が出にくい産業構造|FL比率・営業利益率のデータ
飲食業が廃業しやすい根本的な原因は、業種の構造そのものにあります。
理由1: FL比率の壁——手残りはわずか5〜10%
飲食店経営の基本指標にFL比率があります。食材費(Food)と人件費(Labor)の合計が売上に占める割合で、適正値は60%以下とされています。そこに家賃(Rent)を加えたFLR比率が70%を超えると経営は危険水域です。残りの30%から光熱費・消耗品・広告費・減価償却などを賄うため、最終的な手残りは売上の5〜10%程度に過ぎません。
飲食店のFL比率(食材費+人件費)の適正値は60%以下。FLR比率は70%前後が限界ライン。
引用元:金融庁 飲食業 業種別支援の着眼点(令和5年3月)
理由2: 営業利益率——平均8.6%、実態は4.3%
経済産業省の商工業実態基本調査によると、飲食店の売上高営業利益率は平均8.6%です。ただしこれは比較的規模の大きな事業者を含む数値で、日本政策金融公庫の調査では一般飲食店(黒字・自己資本プラスの企業)の実質的な営業利益率は4.3%に留まっています。
飲食店の売上高営業利益率:平均8.6%(経産省調査)、一般飲食店の実質値:4.3%(公庫調査)。
引用元:経済産業省 商工業実態基本調査
利益率4.3%の意味を具体的に言うと、月商100万円でも利益は43,000円です。家賃・自分の生活費・借入返済を賄うには、よほどの売上規模が必要になります。
理由3: 全業種最低の賃金水準
オーナーが受け取れる報酬の水準も、他業種と比べると極めて低くなります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和6年速報)によると、「宿泊業、飲食サービス業」の年収は約264万円で全業種最低です。全業種平均の460万円(国税庁調査)との差は年間約196万円に達します。
宿泊業、飲食サービス業の月額賃金は259,500円(年収換算:約264万円)で全業種最低。
引用元:厚生労働省 賃金構造基本統計調査 令和6年速報
以下の表で、飲食店の原価構造を整理します。
| 指標 | 目安・実績値 | 備考 |
|---|---|---|
| 食材費率(F) | 約30% | 業態により変動 |
| 人件費率(L) | 約30% | FL比率の半分 |
| FL比率(F+L) | 適正60%以下 | 60%超は要警戒 |
| 家賃率(R) | 売上の10%以下が理想 | 高いと即死リスク |
| FLR比率 | 70%以下が限界ライン | 超過で赤字転落リスク |
| 売上高営業利益率 | 平均4.3〜8.6% | 月商100万円→利益4〜9万円 |
上の表で注目してほしいのは家賃率の欄です。売上の10%超の家賃が発生すると、FL比率が少し悪化しただけでFLR比率が70%を超え、経営が一気に危険水域に入ります。
開業資金の大半が借金|平均985万円の重さ
構造的な利益の出にくさに加えて、多くの開業者が直面するのが「スタート時点での多額の借金」という問題です。
理由4: 平均985万円の開業費用、65.2%が借入
日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査によると、開業費用の平均は985万円(中央値580万円)で、そのうち金融機関借入が65.2%(平均780万円)を占めています。自己資金割合はわずか37.6%です。
開業費用の平均値は985万円、中央値は約580万円。金融機関借入は平均780万円で開業資金の65.2%を占める。自己資金割合は37.6%。
引用元:日本政策金融公庫 2024年度新規開業実態調査
注意:開業資金の平均(985万円)と中央値(580万円)には約400万円の乖離があります。これは少額開業と高額開業の二極化を示しています。「自分はそんなにかからない」と考えていても、内装・設備費が膨らむと一気に高額になりやすい点に注意が必要です。
理由5: 借入でスタートする重圧
780万円の借入を月々返済しながら経営を続けるプレッシャーは想像以上です。売上が想定を下回る月が続くと、運転資金の追加借入が発生し、借金がスタート時点から膨らみ続けることになります。失敗時の具体的な負債額については、後述の「実際の負債事例」の章でデータを示します。
全業種最低の賃金水準と過酷な労働環境
利益構造と借金リスクを確認したところで、次は働く環境の実態を見ていきます。
理由6: 経営者は1日12〜16時間労働が常態
飲食店を開業した経営者の多くが直面するのは、想定外の長時間労働です。仕込み・営業・片付け・発注・経理をすべてこなすと、1日12〜16時間労働が常態化します。複数のソースでこの実態が一致しており、「脱サラして時間の自由を得たい」という動機での開業が最も裏切られやすいポイントのひとつです。
理由7: 外食産業の18%超が過労死ラインを超過
宿泊業、飲食サービス業における脳・心臓疾患による労災支給決定件数は28件(2024年度)で業種別3位。外食産業の18%超が月80時間超の残業(過労死ライン)を超過。
引用元:厚生労働省 過労死等防止対策白書 令和6年版
特に問題なのは、労働負荷が店長・経営者に集中する構造です。パートやアルバイトが退職すると、その穴を経営者が直接埋めることになります。
理由8: 非正社員不足割合65.3%——採用できない業種
帝国データバンクの2024年人手不足調査によると、飲食業の非正社員(パート・アルバイト)不足割合は65.3%で業種別で最高水準です。採用できない状況が経営者の長時間労働をさらに悪化させる悪循環が生まれています。
飲食業の非正社員(アルバイト・パート)不足割合は65.3%と業種別で最高水準とされています。2024年の人手不足倒産は全業種342件で過去最多を2年連続更新したとみられます。
飲食店経営の疲弊と対処法について詳しくはこちらの記事で解説しています。また、飲食店オーナーが直面するプレッシャーの全貌はこちらでまとめています。
競争環境の厳しさ|コスト高騰と大手チェーンの壁
労働環境の厳しさに加えて、2026年現在の外部環境も個人飲食店にとって追い風とは言えない状況が続いています。
理由9: 食材費・人件費・光熱費の急激な高騰
2024年から続く食材費の高騰(円安・原材料高)、最低賃金の継続的な引き上げによる人件費増、電気・ガス代の高止まりが同時に飲食店を直撃しています。コスト上昇分を価格に転嫁したくても、消費者の節約志向が強い状況では値上げが難しく、利益を圧迫する構造が続いています。
理由10: 大手チェーンとの資金力・ブランド力の差
大手チェーンは規模の経済を活かした仕入れコストの低減、システム化されたオペレーション、認知度の高いブランド力という三重の優位性を持っています。個人店がこれらと正面から競争することは極めて困難です。差別化できるコンセプトや立地の優位性がなければ、価格競争に引き込まれて利益が消えていきます。
精神的・身体的な負担|疲弊と撤退判断の先延ばし
競争環境の厳しさだけでなく、飲食店経営は精神的・身体的な消耗という問題も抱えています。
理由11: 売上変動と人材流出の悪循環
飲食店の売上は天候・曜日・季節に大きく左右されます。雨の日・祝日明け・夏の猛暑日は客数が激減し、日々の売上変動のストレスが蓄積します。人が辞めると自分がカバーし、疲弊してサービス品質が下がり、客が離れるという負の連鎖も起きやすい業種です。加えて「もう少し頑張れば黒字になるかも」という損失回避バイアスが撤退判断を先延ばしにさせ、借金だけが膨らみ続けます。
理由12: メンタルヘルス不調のリスク
メンタルヘルス不調による経済損失は年間約7.6兆円(日本全体)。小規模事業場(30人未満)ほどメンタルヘルス対策の取組が低調。
引用元:厚生労働省 こころの耳 統計情報
小規模な飲食店ほど、経営者一人に業務・ストレス・意思決定が集中します。相談できる相手がいない孤独な経営環境は、メンタルヘルス不調のリスクを高めます。
12の理由を整理すると、飲食店が構造的に厳しい理由は「利益率の低さ × 借金の重さ × 労働の過酷さ × 競争の激しさ × 精神的な消耗」の5つが同時に作用することにあります。どれか一つなら対処できても、5つが複合すると回避が格段に難しくなります。
飲食店経営で失敗するとどうなるか——実際の負債事例
飲食店経営の失敗が具体的にどのような結末を迎えるのか、実例を見ていきます。
ここまで12の理由を構造的に整理しました。では実際に失敗した場合、どの程度の負債を背負うことになるのでしょうか。匿名の一般論ではなく、具体的な数字が公開されている事例を4つ取り上げます。
開業資金→最終負債額の実例テーブル
以下の4事例は、実際に閉店・倒産に至った事業者の公開情報をもとにまとめたものです。
| 事例 | 年齢・属性 | 開業資金 | 最終負債額 | 経営期間 | 結末 |
|---|---|---|---|---|---|
| 事例1 | 47歳男性 | 貯金200万+融資500万(計700万) | 1,500万円 | — | 自己破産 |
| 事例2 | 47歳・元上場企業管理職 | 退職金1,500万+融資1,000万(計2,500万) | 1,650万円の赤字(退職金のほぼ全額を喪失) | 1年 | 閉店 |
| 事例3 | 札幌・2店舗経営 | 非公開 | 700万円 | 5年 | 倒産 |
| 事例4 | 恵比寿・和食居酒屋 | 非公開 | 非公開 | 7年 | 閉店 |
上の表で注目してほしいのは、事例1の「開業資金700万円→最終負債1,500万円」という数字です。開業時点の倍以上に借金が膨らんでいます。事例2は合計2,500万円の開業資金のほぼ全額を1年で失っており、脱サラによる「飲食未経験での参入」のリスクを端的に示しています。
飲食店の失敗で背負う借金の種類と返済方法についてはこちらで詳しく解説しています。
失敗に共通する「三つのパターン」
個別事例を確認したところで、失敗に至る共通構造を整理します。現代ビジネスの分析などをもとにすると、失敗には三つのパターンに集約されます。
パターン1: プロダクトアウトの罠
顧客のニーズではなく「自分がやりたいこと」しか考えない開業スタイルです。料理は美味しいが、ターゲット客層が曖昧で立地とのミスマッチが起きます。「自分が食べたいものを作ればお客さんは来る」という思い込みが、集客の失敗に直結します。
パターン2: 投資回収の罠
内装・設備に全資金を投入し、開業後の運転資金をゼロにしてしまうパターンです。見た目が完璧な店が半年で閉店する現場を何度も見てきました。開業後3か月は売上が安定しないのが普通であり、その間の固定費・仕入れ・人件費を賄う運転資金がなければ即座に資金ショートします。
パターン3: 撤退判断の欠如
赤字が続いても「もう少し頑張れば」と撤退判断を先延ばしにするパターンです。撤退基準を事前に設定していないと、損失回避バイアスが強く働き、借金が雪だるま式に膨らみ続けます。
飲食店経営に失敗する人には「プロダクトアウトの罠」「投資回収の罠」「撤退判断の欠如」という三つの共通点があるとされています。
飲食店経営の失敗がその後の人生にどう影響するかはこちらで詳しく解説しています。また、開業を後悔した経営者たちが語る”本音”はこちらの記事にまとめています。
飲食店が潰れる前兆と、ダメな経営者の特徴
飲食店が潰れる前兆とダメな経営者の特徴を、それぞれ5つずつまとめます。
失敗事例の構造を確認したところで、次は「潰れる前兆」と「ダメな経営者」の特徴を整理します。
潰れる飲食店に現れる5つの前兆
実際に閉店・倒産に至った経営者の体験談や調査を総合すると、潰れる前兆は以下の5つに集約されます。
- 常連客の来店頻度が減る——最初に気づくべきシグナルです。常連客は店の実力を最もよく知っており、品質低下や接客の変化に敏感に反応します
- 人材が確保できず、サービス品質が低下する——スタッフが辞め、採用もできない状況が続くと、料理の提供スピード・クオリティが落ちます。これが顧客離れをさらに加速させます
- 仕入れ先への支払いが遅延する——キャッシュフローの悪化が表面化するサインです。支払い遅延が始まると仕入れ条件が悪化し、悪循環に入ります
- 光熱費・家賃の支払いが滞る——固定費の支払いが滞り始めると、残り時間は数か月単位です。この段階では撤退の準備を始めることが最善です
- 経営者自身が「あと少し」と撤退判断を先延ばしにし始める——最も危険なサインです。感情的な撤退判断の先延ばしが借金をさらに膨らませます
実体験として言うと、5つの前兆のなかで最も早く気づけるのは「常連客の来店頻度の変化」です。POSレジの顧客管理機能やリピート率の月次集計を習慣にしておくことで、早期発見が可能です。
飲食店でダメな経営者に共通する5つの特徴
前兆のサインを確認したところで、経営者側の問題——ダメな経営者に共通する特徴を見ていきます。
- 数字を見ない——売上・原価率・FL比率を把握していない経営者は、問題が大きくなるまで気づきません。毎日の売上と週次の原価率確認は最低限の習慣です
- 「料理がうまければ客は来る」と信じている——料理の質は必要条件ですが、それだけでは十分条件になりません。立地・認知・価格設定・接客・リピート促進がすべて揃って初めて集客が成立します
- 人を雇う・育てるスキルがない——採用・育成・定着の仕組みがなければ、常に人手不足の状態が続きます。スタッフが辞めるたびに経営者が穴を埋める悪循環から抜け出せません
- マーケティング(集客)を軽視する——「美味しければ口コミで広まる」という待ちの姿勢では、開業当初の集客ハードルを越えられません。SNS・食べログ・Googleプロフィールの管理は開業前から始めるべきです
- 撤退基準を設定していない——「売上がN円を2か月連続で下回ったら撤退する」という基準を持たないまま経営を続けると、損失回避バイアスが撤退判断を先延ばしにさせ続けます
前兆が3つ以上当てはまっている場合は、早急に資金計画の見直しか撤退の検討を始めることを推奨します。感情的な判断ではなく、事前に設定した基準に照らし合わせて判断することが、最悪の事態を防ぐ唯一の方法です。
それでも飲食店を開業したいなら——成功する人の共通点
飲食店開業で成功する人には共通する特徴があり、低リスクの開業パターンも複数あります。
ここまで厳しいデータを見てきましたが、もちろん成功している飲食店も存在します。廃業する側とは逆に、生き残る側の共通点を確認してから、低リスクで始められる開業パターンを見ていきます。
成功する飲食店に共通する7つの特徴
複数の調査・事例を総合すると、成功する飲食店経営者には以下の7つの共通点が見えてきます。
- コンセプトが明確——「誰に」「何を」「なぜここでないといけないか」が1分で語れるレベルに言語化されている
- 事前の徹底した市場調査——出店エリアの競合・客層・動線を体で確認し、数字に落とし込んでから出店地を決定している
- 経営スキルの習得——料理の腕だけでなく、数字管理(FL比率・損益分岐点)・マーケティング(SNS集客・口コミ対応)・人材育成のスキルを持っている
- 段階的な検証——同業での修行 → テスト営業(キッチンカー・間借り)→ プレオープン → 本格開業という段階を踏んでいる。「いきなり本店」からスタートしていない
- 固定費の最小化——小規模・低家賃・少人数での開業を選択し、ランニングコストを徹底的に抑えている
- 運転資金の十分な確保——開業資金+最低6か月分の固定費を手元に持ったうえで開業している。「開業費で資金ゼロ」にはなっていない
- 時代のニーズへの対応——SNSによる認知獲得・デリバリー対応・インバウンド客への対応など、2026年現在の市場環境に合わせた集客手段を持っている
成功する飲食店の共通点は、コンセプトの明確さと段階的な検証プロセスにあるとされています。
成功する飲食店経営者の詳しい行動パターンはこちらの記事で解説しています。
低リスクの開業パターン|キッチンカー・間借り・居抜き・ゴーストレストラン
成功する人の特徴を確認したところで、リスクを抑えながら飲食業を始める具体的な方法を見ていきます。「店舗型でいきなり開業」以外にも、複数の選択肢があります。
| 開業パターン | 初期投資目安 | 固定費 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| キッチンカー | 数百万円 | 出店場所手数料のみ | 家賃ゼロ、移動可能 | 天候に左右される |
| ゴーストレストラン | 数十万〜数百万円 | 低い | ホールスタッフ不要、複数ブランド展開可 | 対面接客なし、デリバリー手数料 |
| 間借り営業 | ほぼゼロ | 時間貸し料金のみ | テスト営業に最適、リスクほぼゼロ | 営業時間・曜日の制約 |
| 居抜き物件 | 300〜500万円 | 通常の家賃 | 内装費を大幅削減 | 前テナントの設備に依存 |
| フランチャイズ | FC加盟金+数百万円 | 家賃+ロイヤリティ | ブランド力・マニュアル | 自由度が低い、ロイヤリティ負担 |
上の表で注目してほしいのは、間借り営業の初期投資の低さです。本格開業の前にテスト営業としてリスクをほぼゼロで検証できます。「自分の料理・サービスが本当に支持されるか」を確認してから本格投資に踏み切るのが最も堅実なルートです。
私の場合は、居抜き物件の活用が初期投資を抑える上で最も効果的だと実感しています。内装工事費が300〜500万円削減できれば、その分を運転資金に回せます。ただし、前テナントの設備が自分のコンセプトに合うかどうかの見極めは専門家に相談することを強く推奨します。内装や設備のプロに相談することで、居抜き物件のメリットを最大化できます。
潰れない飲食店の経営構造についてはこちらでまとめています。
飲食店開業に使える補助金・助成金・融資制度
飲食店開業に使える主要な補助金・助成金・融資制度をまとめます。
低リスクの開業パターンを確認したところで、次は資金面の支援制度を整理します。「やめたほうがいい」で終わらず、開業を前に進めるための公的支援を活用することが重要です。
主要な補助金・助成金制度一覧テーブル
飲食店開業者が活用しやすい主要な補助金・助成金制度を以下にまとめます。
| 制度名 | 所管 | 概要 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 経済産業省 | 店舗改装・広告・ウェブ制作等 | 2/3(最大50〜200万円) |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 経済産業省 | POSレジ・予約管理システム等 | 1/2〜4/5 |
| 中小企業省力化投資補助金 | 経済産業省 | 券売機・自動精算機・配膳ロボット等 | カタログ型は随時受付 |
| ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 経済産業省 | 設備投資全般 | 1/2〜2/3 |
| キャリアアップ助成金 | 厚生労働省 | 非正規→正規雇用転換等 | 要件充足で受給可能 |
上の表で特に飲食店開業者に関連が高いのは、小規模事業者持続化補助金です。店舗改装費の2/3(最大200万円)が補助される可能性があり、居抜き物件の改修費用に活用できます。
各制度の申請方法や審査基準の詳細はこちらの記事で解説しています。
日本政策金融公庫の融資制度と地方自治体の支援
補助金・助成金に加えて、融資制度も開業資金の選択肢として重要です。
日本政策金融公庫の「新規開業資金」は、自己資金が開業資金の1/10以上あれば申請できます。また、過去に廃業経験がある方向けには「再挑戦支援資金」という専用制度もあります。
日本政策金融公庫では、新規開業者向けの融資制度を複数提供しています。新規開業資金・再挑戦支援資金など、状況に応じて選択できます。
引用元:日本政策金融公庫 新規開業実態調査一覧・各種融資制度
地方自治体独自の補助金は、都道府県・市区町村ごとに異なります。中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21では、エリア別に支援制度を検索できます。
J-Net21(中小企業向け支援情報)で地域の補助金を確認してください。
注意:補助金は”後払い”です。先に自己資金で支出し、審査を経て補助金が入金される仕組みのため、補助金を当てにして手元資金をゼロにしてはいけません。補助金の受給が確定するまでの間の運転資金は別途確保しておく必要があります。
「やめたほうがいい人」判断チェックリスト8項目
飲食店開業の判断に使える自己診断チェックリストを8項目で用意しました。
ここまで廃業率データ・12の理由・失敗事例・成功条件・支援制度を確認してきました。最後に、あなた自身が「やめたほうがいい人」に当てはまるかを判断するためのチェックリストをお渡しします。
以下の8項目について、該当するものにチェックを入れてください。
- 飲食業での実務経験が6か月以上ある
- 開業費用+1年分の運転資金(月間固定費×12か月)+生活費が手元にある
- 「誰のために」「何を提供するか」「なぜここでないといけないか」が1分で語れる
- FL比率・原価率・損益分岐点を自分で計算できる
- 家賃が月間売上予測の10%以下になる物件を選んでいる
- 開業前にテスト販売(間借り・キッチンカー等)で実績を出している
- 最悪の場合(開業後1年で廃業)を想定した人生計画がある
- 内装・設備について専門家に相談し、初期投資の圧縮策を検討している
判定ガイド:
- 8つ全て当てはまる——勝算あり。計画を具体化するフェーズへ進んでください
- 5〜7つ当てはまる——不足している項目を埋めてから次のステップへ。3〜6か月で準備できるものが多いはずです
- 4つ以下——今は「やめたほうがいい」可能性が高いです。まず準備(修行・資金確保・テスト営業)から始めることを推奨します
注意:このチェックリストはゼロかイチかの判定ではありません。不足している項目を把握し、それを埋める計画を立てるためのツールです。8項目をすべて満たしていなくても、満たすための具体的な行動計画があれば前に進めます。
なお、チェック項目8の「内装・設備について専門家に相談する」は、居抜き物件の活用可否や内装改修のコスト圧縮に直結します。開業費用を抑えるために最も効果的な手段のひとつであり、計画の早い段階で検討することを推奨します。
飲食店の廃業率と10年生存率——データの正しい読み方
飲食店の生存率データは、出典によって数字が大きく異なります。
チェックリストで自己診断を終えたところで、廃業率データの「正しい読み方」を補足します。ネット上で流通している「10年で9割閉店」という数字の出典を検証し、信頼性の高いデータを見極める方法をお伝えします。
「10年で9割閉店」は本当か?——出典を検証する
「飲食店の3年以内廃業率は70%」「10年で9割が潰れる」という数字は多くのサイトで引用されています。しかし、この数字の公的統計としての明確な出典を明示している記事はほとんどありません。
最も信頼性の高い公的データは、日本政策金融公庫のパネル調査(飲食業・宿泊業の5年廃業率14.7%)です。ただし、この調査には前述のとおり「公庫融資を受けた企業のみが対象」という限定があり、自己資金のみの零細開業者は含まれていません。
つまり、「10年で9割閉店」が全くの嘘ではない可能性はありますが、それを証明する単一の公的統計は現時点では存在しません。判断の基準として使うなら、公庫パネル調査(5年14.7%)が最も信頼性の高いデータです。
飲食店の1年後・3年後・5年後・10年後の生存率まとめ
「10年で9割閉店」の出典を確認したところで、信頼できる複数ソースを総合した生存率の推計値を表にまとめます。
| 経過年数 | 全業種の生存率(中小企業白書2017年版) | 飲食業の推定生存率(複数ソース総合) |
|---|---|---|
| 1年後 | 95.3% | 約70% |
| 3年後 | 88.1% | 約50% |
| 5年後 | 81.7% | 約30%以下 |
| 10年後 | — | 約10〜30%(調査により幅あり) |
※飲食業の推定値は公庫パネル調査・帝国DB・TSRデータの総合による推計です。単一の公的統計ではありません。
全業種の企業生存率:1年後95.3%、3年後88.1%、5年後81.7%。
引用元:中小企業庁 2024年版中小企業白書 第5節 企業の規模間移動と開廃業
上の表で注目してほしいのは、全業種と飲食業の1年後生存率の差です。全業種が95.3%なのに対して飲食業は約70%と、開業から1年の時点ですでに約25ポイントの差が開いています。最初の1年が最も廃業リスクの高い時期であり、この時期を乗り越えるための運転資金の確保が不可欠です。
「10年で9割閉店」は概ね実態に近い可能性はありますが、正確な公的統計の出典は存在しません。判断に使うなら、日本政策金融公庫のパネル調査(飲食業の5年廃業率14.7%)を基準にするのが最も信頼性が高いです。
よくある質問
飲食店が潰れる前兆は?
常連客の来店頻度減少、人材確保の困難、仕入れ先への支払い遅延、光熱費・家賃の滞納、経営者自身の撤退判断の先延ばしの5つが代表的な前兆です。3つ以上当てはまる場合は、早急に資金計画の見直しか撤退の検討を始めることを推奨します。
起業して1年後の廃業率は?
全業種平均は4.7%です(中小企業白書2017年版をもとに企業生存率95.3%から逆算)。飲食業に限定すると約30%と推計されていますが、この数字は単独の公的統計ではなく、日本政策金融公庫のパネル調査(飲食業の5年廃業率14.7%)からの推計値です。
全業種の開業1年後の生存率は95.3%(廃業率4.7%)。
引用元:中小企業庁 2021年版小規模企業白書 第3節 開廃業の状況
飲食店でダメな経営者の特徴は?
数字を見ない(FL比率・原価率を把握していない)、「料理がうまければ客は来る」と信じている、マーケティング(集客)を軽視する、撤退基準を設定していない——の4つが代表的な特徴です。特に撤退基準の未設定は、損失回避バイアスと組み合わさって借金を雪だるま式に増やすリスクがあります。
飲食店の10年生存率は?
約10〜30%と推計されています(調査・定義により幅あり)。「10年で9割が潰れる」は広く引用されますが、厳密な公的統計の出典は不明確です。最も信頼性の高いデータは日本政策金融公庫のパネル調査(2016年創業→2020年末追跡、飲食業の廃業率14.7%)です。
飲食業・宿泊業の5年廃業率:14.7%(2016年創業→2020年末追跡のパネル調査)。全業種平均8.9%の約1.7倍。
引用元:日本政策金融公庫 2024年度新規開業実態調査
飲食店の失敗でいくら借金を背負うのか?
事例ベースでは700万〜1,500万円が多く見られます。日本政策金融公庫の調査では開業費用の平均が985万円(うち65.2%が借入)で、失敗した場合は開業時の借入額に加えて運転資金の追加借入が上乗せされ、最終負債額は開業資金を大幅に上回るケースが少なくありません。飲食店の失敗で背負う借金の種類と返済方法についてはこちらで詳しく解説しています。
飲食店経営のストレスで限界を感じたらどうすればいい?
まず事前に設定した撤退基準(売上がN円を下回る月がN か月連続等)に照らし合わせてください。基準を設定していない場合は、今すぐ設定することを推奨します。厚生労働省「こころの耳」では働く人のメンタルヘルス相談を受け付けています。
厚生労働省「こころの耳」では、働く人のメンタルヘルス相談を電話・メール・SNSで受け付けています。
引用元:厚生労働省 こころの耳 統計情報・相談窓口
飲食店経営の疲弊と対処法について詳しくはこちらの記事で解説しています。
まとめ——「やめたほうがいい」かどうかはデータで判断する
この記事で確認してきたポイントを5つにまとめます。
- 飲食業の廃業率は全業種で最も高い——中小企業庁が認定した「全業種ワースト5.6%」(年次廃業率)
- 2025年の飲食店倒産は900件超で過去最多を2年連続更新——帝国データバンク・東京商工リサーチが確認
- 失敗には「利益率の低さ × 借金の重さ × 労働の過酷さ × 競争の激しさ × 精神的消耗」の5カテゴリ12項目があり、事前準備で回避可能なものが多い
- キッチンカー・間借り・居抜き物件活用の低リスク開業パターンを活用すれば、本格投資前に実力を検証できる
- 判断チェックリスト8項目で自己診断し、不足を埋めてから挑戦することが最も堅実なルート
「やめたほうがいい」の答えは、人それぞれ異なります。重要なのは、感情ではなくデータで判断すること。廃業率5.6%・倒産900件超という数字は冷静に受け止める必要がありますが、同時に、正しい条件を揃えた開業者が生き残り続けている現実も存在します。この記事の情報が、あなた自身の判断材料になれば幸いです。
飲食店開業の全体的な手順や流れ(営業許可・資金調達・必要な資格など)については、こちらの記事をご覧ください。