「居酒屋を開業したいけれど、食材はどこから仕入れればいいのか分からない」
「仕入れコストが高くて利益が残らない」
居酒屋の経営で仕入れ先の選定に悩む方は少なくありません。
結論からお伝えすると、居酒屋の仕入れ先は卸売業者・ネット通販・市場・小売店・生産者直接取引・展示会の6種類があり、食材カテゴリごとに最適なルートを使い分けることで原価率30%前後のコントロールが可能です。
この記事では、居酒屋の仕入れ先6種類のメリット・デメリット比較から、仕入れ先を選ぶ5つの基準、原価率を抑える実務的なコツ、よくある失敗パターンまでを網羅して解説します。
目次
居酒屋の仕入れ先は6種類ある
- 品揃えと配送の安定性を重視するなら卸売業者が最有力
- 価格比較と少量発注には業務用ネット通販が便利
- 鮮度と差別化を追求するなら市場や生産者直接取引
- 1つのルートに依存せず、食材ごとに最適な仕入れ先を組み合わせる
居酒屋の食材仕入れには、大きく分けて6つのルートがあります。それぞれ得意な食材や対応ロット、価格帯が異なるため、自店の業態と規模に合わせて使い分けることが重要です。

| 仕入れ先 | 価格 | 鮮度 | 最低ロット | 配送対応 |
|---|---|---|---|---|
| 卸売業者 | ◎ | ◯ | 中〜大 | ◎(定期配送) |
| 業務用ネット通販 | ◯ | △〜◯ | 小〜中 | ◯(宅配便) |
| 市場 | ◎ | ◎ | 中〜大 | △(自分で搬入) |
| 小売店 | △ | ◯ | 小 | △(自分で購入) |
| 生産者直接取引 | ◎ | ◎ | 中〜大 | △〜◯ |
| 食品展示会 | — | — | — | —(商談の場) |
卸売業者は品揃えと配送で選ぶ
居酒屋の仕入れにおいて、最も利用頻度が高いのが卸売業者(食品卸)です。鶏肉・鮮魚・野菜・調味料・冷凍食品まで幅広く扱う「総合卸」と、鮮魚や精肉など特定ジャンルに強い「専門卸」の2種類があります。
総合卸のメリットは、1回の発注で多品目をまとめて調達できる点です。焼鳥用の鶏肉、刺身用の鮮魚、揚げ物用の冷凍食品、サラダ用の野菜を同時に配送してもらえるため、居酒屋のように食材の種類が多い業態には特に適しています。掛け払い(月末締め翌月払い)に対応している業者がほとんどで、開業直後の資金繰りにも助かります。
一方で注意すべきは最低発注ロットです。業者によっては一定金額以上でないと配送対応しないケースがあるため、開業前に条件を確認しておきましょう。
業務用ネット通販で価格を比較する
近年利用が急増しているのが、業務用食材のネット通販サイトです。代表的なサービスには八面六臂、シコメルストア、食彩ネットなどがあります。24時間いつでも発注でき、価格がオープンに表示されているため比較検討しやすいのが特長です。
小ロットから購入できるサイトが多く、席数が少ない個人経営の居酒屋でも利用しやすい仕組みになっています。ただし、送料や配送リードタイムはサイトによって差があるため、メインの仕入れ先というよりは「卸売業者では手に入りにくい食材の補完ルート」として活用するのが効果的です。
市場仕入れは鮮度と目利き力が鍵
中央卸売市場や地方の公設市場で直接食材を買い付ける方法です。鮮度の高さと価格の安さが最大の魅力で、特に刺身や焼き魚が看板メニューの居酒屋にとっては差別化の武器になります。
ただし市場仕入れには、早朝に足を運ぶ手間、目利き力、業者との信頼関係構築が求められます。飲食業未経験で開業する場合は、まず卸売業者で経験を積みながら、並行して市場の見学や少量の買い付けから始めるとよいでしょう。
小売店は緊急時のサブルートに使う
スーパーや業務用スーパー(業務スーパー等)、商店街の八百屋・精肉店で仕入れる方法です。メインの仕入れ先としては価格面で不利ですが、「今日の営業分の食材が足りない」といった緊急時のバックアップとしては有効です。
業務用スーパーは一般消費者向けの小売店より割安で、冷凍食品や調味料のまとめ買いには向いています。ただし掛け払いに対応していないケースがほとんどなので、仕入れの記録管理は自分で行う必要があります。
生産者との直接取引で差別化する
野菜農家、養鶏場、漁師から直接食材を仕入れる方法です。中間業者を挟まないため、品質の高い食材を市場価格より安く調達できる可能性があります。さらに「〇〇農園の有機野菜を使用」といったストーリーをメニュー表に載せることで、他店との差別化につながります。
地方で居酒屋を開業する場合は、地元の直売所や農協を起点に生産者とつながるルートを開拓しましょう。規格外品(形が不揃いな野菜など)を格安で仕入れるルートを確保できれば、原材料費を大幅に圧縮できます。
食品展示会で新規開拓の場にする
年に数回開催される食品展示会(JFEX、FABEX、フーデックスなど)は、新しい仕入れ先を一度に多数比較できる貴重な機会です。試食や商談ができるため、カタログだけでは分からない味と品質を直接確認できるのが大きなメリットです。
展示会で出会った業者と取引を開始するケースは少なくなく、特に開業前の準備段階で足を運んでおくと、仕入れ先の選択肢が一気に広がります。
仕入れ先を選ぶ5つのチェック基準
- 品質・鮮度の安定性を最優先に確認する
- 小ロット対応・配送頻度・掛け払い条件の3点を比較する
- 1社依存は避け、食材カテゴリごとに複数ルートを確保する
- 半年に一度は仕入れ条件を見直す習慣をつくる
仕入れ先の種類を把握したら、次は「どの業者を選ぶか」の判断基準を整理しましょう。以下の5つの基準をチェックリストとして使うと、仕入れ先の比較検討がスムーズに進みます。

品質と鮮度の安定性を最優先する
居酒屋は刺身、焼き物、揚げ物とメニューの幅が広い業態です。食材1つの品質が落ちるだけで、料理全体の評価が下がりかねません。初回の取引で品質が良くても、繁忙期に鮮度が落ちたり欠品が増えたりする業者もいるため、最低でも3か月間は品質の推移を記録することをおすすめします。
可能であれば、取引開始前にサンプルを取り寄せて実際に調理してみましょう。カタログの写真やスペックだけでは分からない「歩留まり(使える部分の割合)」を確認できます。
小ロット対応と配送頻度を確認する
席数20〜30席程度の個人経営の居酒屋では、1回あたりの発注量がそれほど多くありません。最低発注金額が高すぎる業者を選んでしまうと、過剰在庫と食材ロスの原因になります。
理想的なのは、週3〜5回の配送に対応しており、1回あたり数千円単位の小ロットでも受け付けてくれる業者です。配送頻度が高いほど、在庫を抱えるリスクが減り、鮮度管理もしやすくなります。
掛け払い対応でキャッシュフローを守る
飲食店の資金繰りにおいて、仕入れの支払い条件は非常に重要です。掛け払い(月末締め翌月払い)に対応している業者であれば、売上で入金されたお金で仕入れ代金を支払えるため、キャッシュフローに余裕が生まれます。
開業直後は信用がないため掛け払いに応じてもらえないケースもあります。その場合は、最初の数か月は現金取引で信頼を積み、その後に掛け払いへの切り替えを交渉するのが現実的なステップです。
食材ごとに複数の仕入れ先を確保する
1社の卸売業者にすべてを依存すると、その業者が欠品したときに営業が止まるリスクが発生します。2026年現在も食材価格の高騰や供給不安定が続いているため、メインの仕入れ先に加えて、最低1社のサブルートを確保しておくことが重要です。
たとえば鮮魚はメインの卸売業者で発注しつつ、品切れの際はネット通販や市場で補完する、といった体制です。複数ルートを持つことで、価格交渉の際にも比較材料として活用できます。
半年に一度は仕入れ条件を見直す
食材の市場価格は季節や経済情勢で変動します。開業時に最適だった仕入れ先が、半年後も最適とは限りません。半年に一度は仕入れ単価、配送条件、品質を総点検し、必要に応じて業者の追加や切り替えを検討しましょう。
見直しの際は、現在の仕入れデータ(品目ごとの単価・発注頻度・ロス率)を一覧にまとめてから比較すると、改善すべきポイントが明確になります。
原価率30%を実現する仕入れのコツ
- 居酒屋の原価率の目安は28〜35%、FLコスト60%以下が健全ライン
- 食材ロスの削減が原価率改善に最も即効性がある
- 高原価メニューと低原価メニューを組み合わせて全体をコントロールする
仕入れ先を決めたら、次に取り組むべきは原価率のコントロールです。居酒屋の利益は「売上 − 原価 − 人件費 − その他経費」で決まるため、仕入れ段階でのコスト管理が経営の安定に直結します。

居酒屋の原価率の目安は28〜35%
飲食業全体の原価率の目安は30%前後とされますが、業態によって適正値は異なります。居酒屋の場合、ドリンク(特にビールや酎ハイ)の原価率が20〜25%と低いため、フード原価率が35%を超えてもドリンク売上との合算で全体30%前後に収めることが可能です。
| カテゴリ | 原価率の目安 | 具体例 |
|---|---|---|
| ドリンク(ビール) | 20〜25% | 生ビール中ジョッキ |
| ドリンク(酎ハイ・サワー) | 10〜15% | レモンサワー |
| フード(刺身・鮮魚) | 35〜45% | 刺身盛り合わせ |
| フード(揚げ物) | 25〜30% | 唐揚げ、ポテトフライ |
| フード(焼鳥・串物) | 28〜35% | 焼鳥5本盛り |
| フード(サラダ・小鉢) | 15〜25% | お通し、枝豆 |
重要なのは、個々のメニューの原価率ではなくメニュー全体で原価率をコントロールする発想です。刺身のように高原価だが集客力のあるメニューと、ドリンクやお通しのように低原価のメニューを戦略的に組み合わせることで、全体の原価率を適正範囲に収められます。
食材ロスを減らす在庫管理の基本
仕入れ値を下げることだけが原価率改善の方法ではありません。廃棄される食材(ロス)を減らすことは、追加コストなしで原価率を下げられる最も即効性のある施策です。
在庫管理の基本として、以下の3つを習慣化しましょう。
- 先入れ先出し:古い食材から使い、消費期限切れの廃棄を防ぐ
- 週次棚卸し:品目ごとの在庫数・消費量・ロス量を記録する
- 発注量の見直し:曜日別の来客数データから逆算して仕込み量を決める
POSレジを導入している場合は、メニューごとの出数データを活用して仕入れ量を自動調整する仕組みも構築できます。飲食店開業の流れ8ステップの記事でも触れていますが、開業時からデータに基づく在庫管理を仕組み化しておくと、後々の経営効率が大きく変わります。
メニュー設計で原価率をコントロールする
原価率のコントロールは仕入れの工夫だけでなく、メニュー設計の段階から始まります。具体的には、以下の3つの考え方を取り入れましょう。
- 看板メニュー(原価率35〜45%):刺身盛り合わせやこだわりの逸品など、集客力のあるメニューは原価をかけて品質を維持する
- 利益メニュー(原価率10〜20%):ドリンク、お通し、枝豆、漬物など、低原価で注文頻度の高いメニューで利益を確保する
- 食材の共通化:複数のメニューで同じ食材を使い回すことで、仕入れロット数を増やし単価を下げつつ廃棄も減らす
たとえば鶏肉を仕入れるなら、もも肉は唐揚げと焼鳥に、むね肉はチキン南蛮とサラダに展開する、といった設計です。1つの食材から3〜4品を展開できるメニュー構成を意識すると、仕入れ効率と原価率のバランスが取りやすくなります。
仕入れで失敗する3つのパターン
居酒屋の仕入れで多い失敗は「安さだけで選ぶ」「発注サイクルが不規則」「お酒の仕入れを後回しにする」の3つです。開業前に対策を把握しておきましょう。
安さだけで業者を選んでしまう
仕入れ単価の安さだけを基準に業者を選ぶと、品質の低下や供給の不安定さに悩まされるケースが少なくありません。安い理由が「鮮度の低さ」や「歩留まりの悪さ」であれば、実質的なコストはむしろ高くなることもあります。
価格だけでなく、品質・配送頻度・対応の柔軟さを総合的に評価しましょう。複数の業者から見積もりを取り、同じ品目で品質とコストのバランスを比較する「相見積もり」が有効です。
発注サイクルが不規則になる
開業直後は営業に追われ、発注のタイミングがバラバラになりがちです。思いついたときに発注する運用では、過剰在庫と欠品が交互に発生し、食材ロスとお客様への提供遅延の両方を招きます。
対策としては、曜日ごとに発注スケジュールを固定することです。たとえば「月曜に鮮魚を発注→水曜入荷」「火曜に精肉を発注→木曜入荷」のようにルーティン化すると、在庫管理がシンプルになります。
お酒の仕入れ先を後回しにする
居酒屋ではお酒の売上が全体の30〜40%を占めるにもかかわらず、食材の仕入れに注力するあまりドリンクの仕入れ先選定が後回しになるケースがあります。お酒は比較的どこでも手に入りますが、仕入れ先によって卸価格に大きな差が出る商材です。
酒販店(酒屋)との直接取引は、スーパーで購入するよりも10〜20%ほど安く仕入れられるのが一般的です。さらに担当営業がつく酒販店であれば、新商品の提案やメニュー構成のアドバイスをもらえることもあります。飲食店経営に必要な資格と届出の記事で解説しているとおり、お酒の提供には特別な免許は不要ですが、仕入れ先の選定は早めに進めておきましょう。
居酒屋の仕入れに関するよくある質問
居酒屋の仕入れに関して、開業準備中の方から多く寄せられる質問と回答をまとめました。
Q
個人経営の居酒屋でも卸売業者と取引できますか?
A
はい、個人経営でも取引可能な卸売業者は多数あります。業務用ネット通販であれば個人事業主でも登録できるサービスがほとんどです。対面の卸売業者の場合は、営業許可証や事業計画書を提示して信頼を示すとスムーズに取引を開始できます。
Q
居酒屋の仕入れにかかる費用は月にどのくらいですか?
A
目安として、月商の28〜35%が仕入れ費用です。月商300万円の居酒屋であれば、月の仕入れ費用は84〜105万円程度が適正範囲になります。ドリンクとフードの売上比率によっても変わるため、自店の売上構成に合わせて計算しましょう。
Q
仕入れの原価率はどうやって計算しますか?
A
原価率の計算式は「原価率(%)= 食材原価 ÷ 売上高 × 100」です。たとえば1杯500円のレモンサワーの食材原価が60円なら、原価率は60÷500×100=12%になります。メニュー単品と月間全体の両方で定期的に計算し、変動を追跡するのが大切です。
Q
お酒の仕入れ先はどこがおすすめですか?
A
地元の酒販店(酒屋)との直接取引が最もおすすめです。スーパーや量販店より卸価格が安く、担当営業が新商品の提案やメニュー相談にも応じてくれます。酒類卸売会社と直接取引するルートもあり、大量発注でさらに単価を下げることも可能です。
Q
居酒屋の仕入れで勘定科目は何を使いますか?
A
食材の仕入れは「仕入高」、消耗品や備品は「消耗品費」で計上するのが一般的です。お酒の仕入れも「仕入高」に含めます。開業届の提出時に青色申告の届出もしておくと、帳簿管理がしやすくなります。