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居酒屋のコンセプトの決め方|5W2Hと成功事例5選で解説

7 min

「居酒屋を開業したいけれど、コンセプトの決め方がわからない」「自分のやりたい居酒屋像はあるのに、うまく言語化できない」——そんな悩みを抱えていませんか。

居酒屋のコンセプトとは「誰に・何を・どのように提供する店なのか」を一言で表した経営の軸です。5W2Hのフレームワークに沿って設計すれば、メニュー・内装・価格帯・集客方法まで一貫した判断ができるようになります。

この記事では、居酒屋にコンセプトが必要な理由から、5W2Hを使った具体的な設計方法、業態別の成功事例5選、コンセプトシートの作り方、よくある失敗パターンまでを網羅的に解説します。

居酒屋にコンセプトが必要な3つの理由

結論
  • コンセプトはメニュー・内装・価格帯などすべての経営判断の軸になる
  • 飲食業の3年以内廃業率は約70%で、差別化なしでは生き残れない
  • 「また来たい」と思わせる明確な来店動機がリピーター獲得につながる

居酒屋は飲食業界の中でも特にコンセプトの多様化が進んでいる業態です。大衆居酒屋、個室居酒屋、立ち飲み、エンタメ系など選択肢が広いからこそ、開業前にコンセプトを明確にすることが成功への第一歩になります。

コンセプトが経営判断の軸になる仕組み

経営判断の軸になる

コンセプトが定まっていれば、開業準備で迷う場面が大幅に減ります。たとえば「仕事帰りのサラリーマンが毎日通える大衆居酒屋」というコンセプトなら、客単価3,000円前後・駅から徒歩5分以内・カウンター席中心という判断が自然に導き出せます。

逆にコンセプトが曖昧だと、内装は高級路線なのにメニューは低価格帯、ターゲットはファミリーなのに立地は繁華街の雑居ビル——といった矛盾が生じやすくなります。コンセプトは「迷ったときに立ち返る原点」として、開業後の経営判断にも一貫性をもたらします。

競合との差別化ができる

飲食店の3年以内廃業率は約70%ともいわれ、居酒屋業態は特に競争が激しい市場です。チェーン店との価格競争に巻き込まれず、個人経営の居酒屋が生き残るには「この店でしか味わえない価値」を明確にする必要があります。

たとえば「秋田の郷土料理と地酒だけを出す居酒屋」と打ち出せば、チェーン店にはない独自性が際立ちます。コンセプトが明確なほど「○○といえばあの店」というポジションを取りやすくなるのです。飲食店の廃業率の実態と対策については飲食店の廃業率と生き残る5つの対策で詳しく解説しています。

集客とリピーター獲得につながる

コンセプトが明確な居酒屋は、SNSやGoogleマップでの情報発信にも一貫性が生まれます。「何を発信すればいいかわからない」という悩みは、コンセプトが曖昧なことが原因であるケースがほとんどです。

さらに、来店した顧客に「この店に来れば○○が楽しめる」という期待値が伝われば、リピート来店の動機が明確になります。新規集客だけに依存しない安定経営を実現するためにも、コンセプトの設計は欠かせません。

居酒屋のコンセプトを5W2Hで設計する方法

ポイント

5W2H(Why・Who・What・Where・When・How・How much)の7項目を順番に埋めれば、漠然としたイメージが具体的なコンセプトに変わります。

コンセプト設計にはさまざまな方法がありますが、5W2Hのフレームワークを使えば抜け漏れなく整理できます。事業計画書にもそのまま転用できるため、開業準備の効率も格段に上がります。

居酒屋コンセプト設計の5W2Hのフレームワーク

Why:開業の動機を言語化する

最初に取り組むべきは「なぜ居酒屋を開業したいのか」という根本的な動機の言語化です。ここがすべての土台になるため、利益を出したいという経済的な理由だけでなく、顧客にどんな価値を届けたいかまで掘り下げましょう

たとえば「地元の漁港で揚がる魚の美味しさを都会の人にも知ってほしい」「仕事で疲れた人が気兼ねなくひとりで飲める場所をつくりたい」など、個人的な想いを含めて言葉にすることが強いコンセプトの原動力になります。

Who:ターゲット顧客を具体化する

「老若男女すべて」をターゲットにすると、結果的に誰にも刺さらない店になります。年齢・性別・職業・利用シーンまで絞り込んだペルソナ(顧客像)を設定しましょう。

項目具体例A:大衆居酒屋具体例B:隠れ家居酒屋
年齢層20〜40代30〜50代
職業会社員・学生管理職・経営者
利用シーン仕事帰りの気軽な一杯接待・記念日ディナー
来店頻度週1〜2回月1〜2回
客単価2,500〜3,500円6,000〜10,000円

ペルソナが決まれば、「その人はなぜわざわざ自店に来るのか」が見えてきます。この問いに答えられるかどうかが、コンセプトの強さを左右します。

What:提供する料理と体験を決める

居酒屋が提供するのは料理だけではありません。空間・接客・演出を含めた「体験」全体がWhatにあたります。

  • 看板メニュー(これを目当てに来店する一品)
  • ドリンクの方向性(日本酒特化・クラフトビール・ワインなど)
  • 空間演出(カウンター越しの調理、個室のプライベート感、活気ある賑わいなど)
  • 接客スタイル(距離の近いフレンドリー接客・品のある丁寧な接客)

看板メニューは3品以内に絞るのが鉄則です。「何でもある店」は「何もない店」と同義であり、顧客の記憶に残りません。

Where:立地と店舗の雰囲気を選ぶ

立地は後から変更できないため、5W2Hの中でも特に慎重な検討が必要です。ターゲットが集まるエリアコンセプトを表現できる物件の2つが一致する場所を探しましょう。

立地タイプ向いているコンセプト注意点
駅前繁華街大衆居酒屋・立ち飲み家賃が高く競合も多い
オフィス街接待向け・おひとりさま居酒屋土日の集客が課題
住宅街・路地裏隠れ家・常連型居酒屋新規集客に工夫が必要
ロードサイドファミリー・宴会対応型駐車場の確保が必須

居抜き物件を活用すれば内装費を大幅に抑えられますが、前の店舗のイメージが残るデメリットもあります。コンセプトとの整合性を確認したうえで判断してください。

When・How・How much:営業形態を設計する

残りの3項目は営業形態に直結する要素です。まとめて設計することで、コンセプトと収支計画の整合性を確認できます。

項目設計する内容具体例
When(いつ)営業時間・定休日平日17〜24時、土曜15〜23時、日曜定休
How(どのように)提供スタイル・集客方法カウンター8席+テーブル12席、SNS集客中心
How much(いくらで)客単価・価格帯客単価3,500円、フード500〜1,200円、ドリンク400〜800円

客単価と席数から月商を逆算し、家賃比率10%以内に収まるかを検証するのが基本です。居酒屋経営の収益構造や具体的な開業手順については居酒屋経営の始め方と年収の実態で詳しく解説しています。

居酒屋コンセプトの成功事例5選

ポイント

業態ごとにコンセプトの方向性は大きく異なります。自分の強みや開業資金に合ったタイプを参考にしましょう。

ここでは代表的な5つの業態について、コンセプトの構造とターゲット、成功のポイントを整理します。

居酒屋5つの業態別コンセプトの方向性

大衆居酒屋型のコンセプト例

コンセプト例:「会社帰りに毎日寄れる、ワンコインつまみと生ビールの店」。ターゲットは20〜40代の会社員で、客単価は2,500〜3,500円が目安です。

成功のポイントは回転率の高さにあります。席数を多めに確保し、滞在時間90分前後で設計することで日商を最大化できます。フードの原価率は30%以下、ドリンク比率を50%以上に保つことが利益確保の条件です。

隠れ家・個室居酒屋型のコンセプト例

コンセプト例:「路地裏の古民家で味わう、旬の日本酒と創作和食」。ターゲットは30〜50代の管理職や経営者層で、客単価は6,000〜10,000円を想定します。

回転率は低くなりますが、客単価の高さで売上を確保します。予約制を導入すれば食材ロスも最小限に抑えられます。内装への初期投資が大きくなるため、居抜き物件の活用や段階的な改装を検討しましょう。

郷土料理特化型のコンセプト例

コンセプト例:「宮崎直送の地鶏と焼酎で、九州の夜を東京で再現する居酒屋」。特定の地域の食材と酒に絞り込むことで、チェーン店には真似できない独自性が生まれます。

仕入れルートの確保が生命線になるため、産地の生産者と直接つながるネットワークを開業前に構築しておくことが重要です。食材の希少性がそのまま差別化要因になり、「ここでしか飲めない地酒」が強力な集客フックとなります。

エンタメ・体験型のコンセプト例

コンセプト例:「忍者が接客する戦国居酒屋で、非日常の宴を楽しむ」。面白いコンセプト居酒屋はSNSとの相性が非常に高く、口コミによる新規集客力が強いのが特徴です。

ただし、エンタメ性に頼りすぎると「一度行けば満足」で終わるリスクがあります。リピート来店を促すには、料理の質や季節ごとの演出の更新など、体験の鮮度を保つ仕組みが不可欠です。

ワンオペ小規模居酒屋型のコンセプト例

コンセプト例:「店主がひとりで切り盛りする、カウンター8席の焼き鳥と日本酒の店」。開業資金を500万〜800万円に抑えられるため、自己資金+日本政策金融公庫の融資で開業しやすい業態です。

ワンオペの場合はメニュー数を絞り、仕込みと提供のオペレーションを徹底的に簡素化することが成功の条件です。「少ないメニューを極限まで磨き上げる」というスタンスが、結果的にコンセプトの強度を高めます。

コンセプトシートの作り方と活用法

この節のまとめ
  • 5W2Hの回答をA4用紙1枚にまとめたものがコンセプトシート
  • 事業計画書・物件探し・融資面談にそのまま転用できる
  • 第三者にチェックしてもらうことで矛盾を発見できる

5W2Hで考えた内容は、頭の中にとどめず必ずコンセプトシートとして書面に残しましょう。書き出すことで曖昧な部分が浮き彫りになり、各項目間の矛盾にも気づけます。

コンセプトシートから開業までの流れ

コンセプトシートに記入する7項目

コンセプトシートは、5W2Hの回答に加えて「店名案」「一言コンセプト」を追記したA4用紙1枚の設計図です。以下の7項目を埋めてみましょう。

項目記入内容記入例
一言コンセプト30文字以内で店の価値を要約毎日通いたくなる、ひとり飲みの聖地
Why(動機)なぜこの店をやりたいのかひとりで気兼ねなく飲める場所が少ないと感じたから
Who(ターゲット)メイン顧客のペルソナ30代男性会社員、仕事帰りに週2回ほど利用
What(商品・体験)看板メニューと空間の特徴日替わり小皿5品+クラフトビール10種、カウンター中心
Where(場所)立地と物件の条件ターミナル駅から徒歩3分、10坪・カウンター8席
When・How営業時間と提供スタイル平日17〜24時、日曜定休、キャッシュレス対応
How much客単価と価格帯客単価3,000円、フード400〜800円、ドリンク500〜700円

記入が終わったら、「全体の整合性がとれているか」「ターゲットにニーズがあるか」「コスト面で無理がないか」の3点でセルフチェックします。可能であれば飲食業の経験者や開業支援の専門家に見てもらうと、客観的なフィードバックが得られます。

事業計画書への落とし込み方

コンセプトシートが完成したら、そのまま事業計画書の骨格として活用できます。日本政策金融公庫の創業計画書テンプレートでは「創業の動機」「取扱商品・サービス」「セールスポイント」の記入欄がありますが、これらはすべて5W2Hの回答を転記するだけで埋まります。

さらに、How muchで設定した客単価と席数・回転率から月商を算出し、家賃・原価・人件費を差し引いた収支計画も作成できます。コンセプトが数字の裏付けを持っていることが、融資審査での説得力を大きく高めます。飲食店の開業準備を時系列で知りたい方は飲食店開業の流れ8ステップも参考にしてください。

居酒屋のコンセプト設計でよくある失敗3選

注意
  • 「誰でも歓迎」のコンセプトは誰にも刺さらない
  • コンセプトとメニュー・内装の矛盾は客離れの原因になる
  • 立地との不一致は開業後に修正できない致命的ミス

コンセプトの設計段階で陥りやすい失敗パターンを事前に知っておくことで、開業後の手戻りを防げます。

ターゲットを広げすぎる

「年齢も性別も関係なく、誰でも楽しめる居酒屋」は一見すると懐が深いように見えます。しかし実際には、ターゲットが広すぎるとメニューも内装も中途半端になり、結果的にどの層にも選ばれない店になりがちです。

まずはメインターゲットを1つに絞り、そのターゲットに刺さるコンセプトを設計してください。サブターゲットを設定するのはメインが固まった後で十分です。

コンセプトとメニューが矛盾する

「こだわりの和食居酒屋」を掲げながら、メニューにパスタやピザが並んでいるケースは珍しくありません。お客様は看板やSNSで「和食」を期待して来店するため、実際のメニューとのギャップは信頼の毀損につながります。

メニュー開発の段階で「このメニューはコンセプトに合っているか」を一品ずつ確認する習慣をつけましょう。迷ったらコンセプトシートに立ち返ることが判断の精度を上げます。

立地との整合性を見落とす

「接待向けの高級居酒屋」を学生街で開業したり、「毎日通える大衆居酒屋」をオフィスのないベッドタウンに出店したりするのは、コンセプトと立地の不一致です。

立地は開業後に変更できない唯一の要素です。物件の家賃や条件に惹かれて契約を急ぐのではなく、ターゲットが実際にそのエリアに存在するかを客観的なデータで検証してください。商圏分析にはjSTAT MAPなどの無料ツールが活用できます。

居酒屋のコンセプトに関するよくある質問

Q

居酒屋のコンセプトは開業後に変更できますか?

A

メニューや接客スタイルなどの軽微な調整は可能ですが、大幅なコンセプト変更は内装工事や看板の作り直しが必要になり、多額のコストが発生します。開業前に十分な検討を行い、ブレない軸を固めておくことが重要です。

Q

コンセプトとテーマの違いは何ですか?

A

コンセプトは「誰に・何を・なぜ提供するか」を示す経営の軸です。一方、テーマは「和風」「昭和レトロ」など空間の雰囲気を表す表層的な要素です。先にコンセプトを固め、それを表現する手段としてテーマを選ぶ順番が正しい設計の流れです。

Q

飲食未経験でもコンセプト居酒屋を開業できますか?

A

法的には食品衛生責任者の資格(1日の講習で取得可能)があれば開業できます。ただし、調理や接客の実務経験がないと開業後のオペレーションで苦労するケースが多いため、最低でも半年〜1年は居酒屋での勤務経験を積むことを推奨します。

Q

コンセプトシートは誰に見せるべきですか?

A

飲食業の経験者、開業支援の専門家(中小企業診断士、商工会議所の相談員など)、そして自分がターゲットとして想定している層の知人に見せるのが効果的です。第三者の目で矛盾点や見落としを指摘してもらうことで、コンセプトの完成度が高まります。