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小さな居酒屋の開業資金は500万〜800万円|内訳と3つの調達法

8 min

「小さな居酒屋を開きたいけれど、開業資金がいくら必要なのかわからない」「自己資金が少なくても居酒屋を始められるのだろうか」——そんな不安を抱えている方は少なくありません。

結論から言うと、10坪前後の小さな居酒屋であれば開業資金は500万〜800万円が目安です。居抜き物件の活用や中古機器の導入で、さらにコストを抑えることもできます。

この記事では、小さな居酒屋の開業資金の内訳から調達方法、必要な資格・届出、そして失敗を防ぐための損益設計まで、開業準備に必要な情報を網羅的に解説します。

小さな居酒屋の開業資金の目安

結論
  • 10坪前後の小さな居酒屋なら開業資金500万〜800万円が目安
  • 自己資金は開業費用の30%(150万〜240万円)を用意すると融資が通りやすい
  • 立ち飲みスタイルなら300万円台からの開業も現実的

居酒屋の開業資金は規模で大きく変わる

居酒屋の開業資金は、店舗の規模と立地によって500万円〜1,500万円と大きな幅があります。日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、飲食業を含む全業種の開業費用の平均は985万円、中央値は約580万円です。

ただし、この数値はフルサービスのレストランや大型店舗も含んだ平均です。小さな居酒屋に絞れば、必要な開業資金はこの中央値付近かそれ以下に収まるケースがほとんどです。

引用元:日本政策金融公庫 2024年度新規開業実態調査

10坪前後なら500万〜800万円が現実的

10坪前後の小規模居酒屋に限定すると、開業資金の目安は500万〜800万円です。この金額には物件取得費、内装・設備費、厨房機器・備品費、そして開業後の運転資金が含まれます。

居酒屋の規模別開業資金の目安

居酒屋は1坪あたり1.5〜2.7席を確保できるため、10坪なら15〜27席程度の店舗になります。カウンター主体であれば少ない坪数でも効率よく席を配置でき、初期投資を抑えやすい構造です。

店舗規模開業資金の目安席数の目安
5坪以下(立ち飲み)300万〜500万円10〜15名
10坪前後(小規模)500万〜800万円15〜27席
20坪以上(中規模)1,000万〜1,500万円30〜50席

自己資金は開業費用の30%を準備する

日本政策金融公庫の同調査によると、開業時の資金調達額の平均は1,180万円で、そのうち自己資金の平均は280万円です。割合にすると約23%を自己資金で用意しているのが実態です。

融資審査では自己資金の額が重要な判断材料になります。一般的に開業費用の30%を自己資金として用意できると、金融機関からの信頼を得やすくなります。500万円の開業を想定するなら、最低150万円の自己資金を目標にしましょう。

開業資金の内訳を費目別に解説

ポイント

開業資金の内訳を正確に把握すれば、削減できる費目と削ってはいけない費目が明確になります。最も大きな比率を占めるのは物件取得費と内装・設備費の2項目です。

物件取得費は家賃の6〜10か月分

物件取得費とは、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・前家賃などをまとめた初期費用です。飲食店の場合、保証金が家賃の6〜10か月分に設定されるのが一般的で、物件取得だけで100万〜300万円かかることも珍しくありません。

家賃15万円の物件であれば、保証金(6か月分)90万円+礼金15万円+仲介手数料15万円+前家賃15万円で、合計約135万円が初期に必要です。都心部では保証金が10か月分以上に設定されるケースもあるため、物件選びの段階で総額を必ず試算しましょう。

内装・設備費は居抜きなら200万〜400万円

内装工事費は物件の状態によって大きく変動します。前のテナントの設備がそのまま残る居抜き物件であれば200万〜400万円程度に抑えられますが、何もない状態のスケルトン物件では500万円以上かかる場合があります。

開業資金の内訳

小さな居酒屋でコストを抑えるなら、居抜き物件の活用が最も効果的です。以前居酒屋だった物件であれば、カウンター・厨房設備・換気ダクト・ガス配管などがそのまま使えるため、内装費を大幅に削減できます。

厨房機器・備品は100万〜200万円

厨房機器は居酒屋の心臓部です。冷蔵庫・製氷機・コンロ・フライヤー・食洗機などの厨房機器に100万〜200万円、食器・グラス・調理器具・テーブル・椅子などの備品に30万〜80万円が目安になります。

居酒屋の場合、ビールサーバーの導入費用も考慮が必要です。リースであれば月額数千円〜1万円程度で利用でき、初期費用を抑えられます。酒販メーカーとの取引条件によっては無償貸与を受けられるケースもあるため、仕入先の選定と合わせて検討しましょう。

運転資金は月間固定費の6か月分

開業直後から売上が安定することはまれです。最低でも月間固定費の6か月分を運転資金として確保しておく必要があります。

家賃15万円・人件費20万円・食材費15万円・水道光熱費5万円・その他5万円とすると、月間固定費は約60万円です。6か月分で360万円の運転資金が必要になる計算です。ただし、一人営業であれば人件費を大幅に削減でき、必要な運転資金も150万〜200万円程度に抑えられます。

費目金額の目安全体に占める割合
物件取得費100万〜300万円約20〜30%
内装・設備費200万〜400万円約30〜40%
厨房機器・備品100万〜200万円約15〜25%
運転資金(6か月)150万〜360万円約20〜30%

開業資金を抑える5つの方法

ポイント
  • 居抜き物件の活用で内装費を半額以下に圧縮できる
  • 中古厨房機器の購入で新品比50〜70%のコストカットが可能
  • 立ち飲みスタイルなら開業資金300万円台も現実的

居抜き物件で初期投資を半減させる

居抜き物件とは、前のテナントの内装や設備がそのまま残っている物件のことです。スケルトン(何もない状態)から内装を始める場合と比べて、内装・設備費を200万〜300万円以上削減できる可能性があります。

特に前のテナントが居酒屋やバーだった物件は、ガス・水道・換気の配管がそのまま使えるため効率的です。ただし、設備の経年劣化や保健所の基準を満たしているかは必ず確認してください。造作譲渡費として前の借主に50万〜150万円程度を支払うケースが一般的です。

中古厨房機器で新品比50〜70%カット

冷蔵庫やコンロ、製氷機などの厨房機器は中古品を活用すれば、新品の50〜70%の価格で購入できます。テンポスバスターズやフードマーケットなどの中古厨房機器専門店では、業務用の中古機器が豊富に揃っています。

ただし、中古品には保証期間が短い・修理費用が高額になるリスクがあります。冷蔵庫や製氷機など「壊れたら営業できなくなる」機器は、状態を十分に確認したうえで購入しましょう。

一人営業で人件費をゼロにする

小さな居酒屋の最大のメリットは、一人で営業できることです。カウンター8〜12席の店舗であれば、オーナー1人で調理・接客・会計をこなせます。人件費がゼロになれば、月間固定費を大幅に下げられ、損益分岐点を低く設定できます。

忙しい時間帯だけアルバイトを1名入れる「ピーク時だけ雇用」の方法も有効です。週末の金曜・土曜だけスタッフを確保すれば、月間の人件費を5万〜8万円程度に抑えられます。

DIYで内装費を圧縮する

壁の塗装や棚の設置、照明の取り付けなど、専門技術が不要な工程はDIYでまかなうことでコストを削減できます。塗装だけでも業者に依頼すると20万〜50万円かかりますが、自分で行えば材料費の数万円で済みます。

ガス・電気・水道の配管工事や、消防設備の設置は資格が必要なため、必ず専門業者に依頼してください。「自分でできる範囲」と「プロに任せるべき範囲」を明確に分けることが重要です。

立ち飲みスタイルなら300万円台から

近年注目を集めている立ち飲み居酒屋は、椅子やテーブルが不要なぶん備品コストが低く、3〜5坪の狭小物件でも開業できます。物件取得費・内装費・運転資金を合計しても、300万円台からの開業が現実的です。

立ち飲みは回転率が高く、客単価が低くても売上を積み上げやすい業態です。ただし、長時間滞在する常連客を獲得しにくいデメリットもあるため、駅前や繁華街など人通りの多い立地選びが成功の鍵になります。

開業資金の調達方法4選

ポイント

自己資金だけで開業費用をまかなう必要はありません。日本政策金融公庫の創業融資を軸に、補助金や制度融資を組み合わせて資金計画を立てましょう。

開業資金の調達方法フローチャート

日本政策金融公庫の創業融資

飲食店の開業資金調達で最も利用されているのが、日本政策金融公庫の創業融資です。無担保・無保証人で最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)まで融資を受けられ、金利も民間金融機関より低い水準です。

2024年3月の制度リニューアルにより、以前あった「自己資金が融資額の10分の1以上」という要件は撤廃されました。ただし、自己資金がゼロの場合は審査が厳しくなるため、開業費用の30%程度は準備しておくのが現実的です。事業計画書の精度が審査通過の最大の鍵になります。

自治体の制度融資を活用する

各自治体が設けている制度融資は、信用保証協会の保証を利用して民間金融機関から融資を受ける仕組みです。自治体が利子補給を行うため、実質的な金利が低くなるメリットがあります。

例えば東京都の「創業融資」は融資限度額3,500万円、利率は固定で1%台後半(2026年現在の目安)です。地域によって条件が異なるため、開業予定地の自治体窓口や商工会議所で最新情報を確認しましょう。

補助金・助成金で返済不要の資金を得る

補助金・助成金は返済不要の資金である点が最大の魅力です。飲食店の開業で活用しやすい主な制度は以下のとおりです。

制度名補助上限額補助率
小規模事業者持続化補助金(通常枠)50万円2/3
IT導入補助金450万円1/2〜3/4
中小企業新事業進出促進補助金9,000万円1/2〜2/3

注意点として、補助金は「先に支払い、後から補助される」後払い方式が基本です。開業時のキャッシュフローには直接寄与しないため、融資や自己資金と組み合わせて計画する必要があります。

クラウドファンディングで支援を集める

CAMPFIREやMakuakeなどのプラットフォームを利用すれば、開業前から支援者(=将来の顧客)を獲得しながら資金を調達できます。リターンとして「オープン記念の食事券」「常連パスポート」などを設定すれば、開業初日から集客にもつながります。

飲食店のクラウドファンディングでは50万〜200万円程度の調達が多いため、開業資金のすべてをまかなうのではなく、内装費や備品費の一部を補うイメージで活用するのが現実的です。

居酒屋開業に必要な資格と届出

注意

居酒屋の開業に調理師免許は不要です。必須資格は「食品衛生責任者」と「防火管理者」の2つのみ。深夜0時以降に酒類を提供する場合は、別途届出が必要になります。

食品衛生責任者と防火管理者が必須

居酒屋を開業する際に法律上必須となる資格は、食品衛生責任者防火管理者の2つです。よくある誤解ですが、調理師免許は居酒屋の開業に必須ではありません。

資格取得方法費用所要時間
食品衛生責任者各都道府県の養成講習会を受講約1万円約6時間(1日)
防火管理者(乙種)消防署主催の講習会を受講約7,000円約5時間(1日)

食品衛生責任者は1店舗に1名の配置が義務付けられています。調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格を持っていれば講習は免除されます。講習は予約制で人気の日程はすぐ埋まるため、早めに申し込みましょう。資格取得の詳細は飲食店経営に必要な資格2つと届出7種で解説しています。

深夜酒類提供飲食店営業の届出

深夜0時以降にお酒を提供する居酒屋は、「深夜酒類提供飲食店営業」の届出を管轄の警察署に提出する必要があります。届出を怠ると、最大6か月の営業停止処分を受ける可能性があります。

この届出には店舗の図面や照明設備の仕様書が必要です。営業開始の10日前までに届出を完了させる必要があるため、物件が決まった段階で早めに管轄警察署に相談しましょう。

開業届と青色申告承認申請も忘れずに

個人事業主として居酒屋を開業する場合、開業後1か月以内に税務署へ「個人事業の開業届出書」を提出します。同時に「青色申告承認申請書」も提出しておくと、最大65万円の所得控除を受けられるため節税効果が大きいです。

開業届から営業許可申請までの全体的な流れは飲食店開業の流れ8ステップで時系列にまとめています。

小さな居酒屋の開業で失敗しないために

この節のまとめ
  • 飲食店の倒産原因の90%は「販売不振=集客の失敗」
  • 損益分岐点を開業前に必ず計算する
  • FL比率(食材費+人件費)を売上の60%以下に維持する

損益分岐点を開業前に計算する

損益分岐点とは、売上が経費と同額になるラインのことです。このラインを超えれば利益が出て、下回れば赤字になります。開業前にこの数値を算出しておくことで、「1日何人のお客さんが来れば黒字か」を具体的にイメージできます。

損益分岐点の仕組み

例えば、月間固定費が50万円・変動費率が40%の小さな居酒屋の場合、損益分岐点の月間売上は約83万円(50万円÷0.6)です。客単価3,500円であれば、月に約237人(1日あたり約8人)の来店で黒字化できる計算になります。

運転資金の不足が最大の廃業原因

東京商工リサーチの調査によると、飲食店の倒産原因の90.2%は「販売不振」です。これは売上が伸びず、運転資金が枯渇して事業を継続できなくなるパターンです。

開業時に内装や設備に資金を使い切ってしまい、開業後3か月以内に資金ショートするケースが後を絶ちません。「初期投資にお金をかけすぎない」「運転資金は最低6か月分確保する」の2点を厳守してください。飲食業の廃業構造の詳細は飲食店の廃業率は3年で7割?もあわせてご覧ください。

FL比率60%以下を維持する

FL比率とは、Food(食材費)とLabor(人件費)の合計が売上に占める割合です。飲食業ではFL比率60%以下が健全な経営の目安とされています。

項目理想的な比率注意が必要なライン
食材原価率(F)28〜32%35%以上
人件費率(L)25〜30%35%以上
FL比率合計55〜60%65%以上

小さな居酒屋で一人営業する場合、人件費率はほぼゼロになるため、FL比率を50%以下に抑えることも可能です。その分、食材の質にコストをかけて差別化する戦略が取れます。居酒屋経営の具体的な損益構造については居酒屋経営の始め方と年収の実態で詳しく紹介しています。

よくある質問

Q

居酒屋の開業資金はいくらが平均ですか?

A

店舗型の居酒屋の場合、500万〜1,500万円が相場です。10坪前後の小さな居酒屋であれば500万〜800万円、立ち飲みスタイルなら300万円台からの開業も可能です。日本政策金融公庫の調査では、飲食業を含む全業種の開業費用の中央値は約580万円となっています。

Q

自己資金がなくても居酒屋を開業できますか?

A

制度上は自己資金ゼロでも日本政策金融公庫の融資に申し込めます。ただし、自己資金がゼロの場合は審査が厳しくなるのが実情です。開業費用の30%程度(500万円の開業なら150万円)の自己資金を用意しておくと、融資の通過率が大きく上がります。

Q

個人経営の居酒屋オーナーの年収はどのくらいですか?

A

個人経営の小さな居酒屋のオーナー年収は200万〜500万円程度が一般的です。月商100万円の店舗で利益率10〜15%であれば、年間の手取りは120万〜180万円になります。客単価の向上やリピーター獲得で月商を伸ばせば、年収500万円以上も十分に目指せます。

Q

居酒屋の開業に調理師免許は必要ですか?

A

調理師免許は居酒屋の開業に必須ではありません。法律上必須なのは「食品衛生責任者」と「防火管理者」の2つだけです。食品衛生責任者は1日の講習(費用約1万円)で取得でき、調理師免許を持っていれば講習が免除されます。

Q

居酒屋の開業成功率はどのくらいですか?

A

飲食業全体の5年生存率は20〜30%程度とされています。つまり5年以内に7〜8割の店舗が廃業する計算です。ただし、廃業の大半は「運転資金の不足」「損益分岐点の未計算」など開業前の設計ミスが原因です。資金計画と損益シミュレーションを事前に行えば、生存率は大きく向上します。